写真 SHVの多チャンネル生中継伝送実験の映像
写真 SHVの多チャンネル生中継伝送実験の映像
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 NHKは2009年5月19日,放送技術研究所の研究成果を披露する技術展示会である「技研公開」のプレスプレビューを開催した。NHKは,自らが実用化を目指しているスーパーハイビジョン(SHV)の研究開発の成果を披露した。

 NHKは今回の技研公開で,情報通信研究機構(NICT)と共同で,超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)」によるSHVの多チャンネルの生中継伝送実験を会場で行う。あらかじめ収録した二つの映像番組を衛星で一緒に伝送する。つまり合計3チャンネルのSHVコンテンツを伝送して,放送技術研究所で表示する。

 将来の衛星で伝送帯域が広帯域になることを想定して,伝送帯域幅300MHzの広帯域変復調器を開発した。転送レート500Mb/sの速度でデータを送ることができるため,SHV番組の多チャンネル伝送が可能になった。きずなは,伝送帯域幅が550MHz以上と広帯域であるため,この衛星を利用して伝送実験を行う。

 これ以外のスーパーハイビジョン(SHV)関連の展示として,3300万画素3板式カラーカメラも公開する。フル解像度のSHVの広帯域映像信号(72Gb/s)を処理するため,新たにカメラコントロールユニットを試作した。輪郭補償処理などを加えて,撮影画像の画質改善を図った。このカメラの開発に合わせて,SHVコンテンツの制作現場で容易に映像確認ができるようにフル解像度映像から2000本級映像へのダウンコンバーターを開発したほか,SHV映像信号の機器間接続を容易にするため,12芯光マルチケーブル4本で接続が可能な小型光伝送モジュールを試作した。

 新たに開発したSHVの映像を表示するプロジェクターも展示する。このプロジェクターは,SHVのフル解像度(7680×4320画素)の動画表示に対応する。NHKは今後,SHVカメラからの映像信号を,このプロジェクター用の色変調画像の輝度変調画像へとリアルタイムに変換できる装置の開発を進める予定である。

 さらに恒例のSHVシアターでの番組公開を実施する。今回は海の風景などからなる数分程度の番組と,札幌からの衛星伝送実験の映像を公開する。