図1 開発した装置とコンスタレーションの比較
図1 開発した装置とコンスタレーションの比較
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図2 開発した装置の回路構成
図2 開発した装置の回路構成
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 NHKは,地上デジタル放送の家庭の受信環境に向けて,ハードウエアの軽量化を図った「同一チャンネルの干渉除去技術」を開発した(図1)。

 地上デジタル放送の送信所の設置が全国で進んでいる。この結果,電波の異常伝播によって,遠方から同一チャンネルの放送波が到来して,本来の放送波を十分な強度で受信しているにも関わらず,受信不能になる場合がマレにあった。開発した装置は,この干渉を除去するものである。

 開発したのは,2本のアンテナを利用し,受信信号の合成の仕方を工夫することでアンテナの指向性を絞るアダプティブアレイ・アンテナ技術を応用している。所望波の到来方向からの信号をしっかり受信し,干渉波の到来方向からの信号は拾わないようにすることで,干渉を抑える。

 NHK放送技術研究所はこれまで,放送波中継局用に干渉除去装置を開発してきた。同システムでは,四つのアンテナを利用する。アレー合成や等化処理を,FFT(高速フーリエ変換)したあとの周波数領域で行い,最後に逆FFTし変調波を生成していた。こうした構成の場合はアレー合成や等化処理回路が5617個必要となる。その分,干渉除去性能が高く,多数の干渉波を除去できる。マルチパス歪みの等化も行う。

 これに対し,今回はアンテナは2個であり,かつアレー合成はFFTの前に行う(図2)。このため,改善効果が少し劣り,また除去できる干渉波の数も限定的となる。しかし,回路の大幅な簡略化ができたため,試作機の段階で既に図1に示したような小型な装置にまとまっている。