NHKは2009年5月18日,マラソンや駅伝など移動中継などに用いるハイビジョン番組素材無線伝送装置(FPU)に向けた高性能誤り訂正符号を開発したと発表した。移動中継では,中継車から送る電波が周囲の建物などで遮られたり反射するため、映像が乱れたり途切れる可能性がある。それを軽減する手法の一つが誤り訂正技術であるが,今回その誤り訂正能力をより高めるためLDPC符号をベースとした新しい誤り訂正符号を開発した。

 開発した誤り訂正符号は,LDPC符号の中でも演算量が比較的少ないLDGM符号を用いた。特性の異なる2つのLDGM符号を接続した構成とすることにより,誤り訂正の性能を大きく向上させることに成功したという。従来の誤り訂正符号と比べて,約2dBの改善を得られたと報告する。また,畳み込み符号とリードソロモン符号の組み合わせという一般的な手法に対して,C/Nに関わらず改善効果を得ていることも特徴である。

 演算量が少ない符号を用いたことにより,従来のLDPC符号では難しかった高ビットレートの高画質な信号の伝送も可能となった。この誤り訂正符号を実装したマラソン中継用の800MHz帯FPUの試作装置では,約100Mb/sの高ビットレート信号をリアルタイムに伝送できる。2009年5月月21日~24日に開催する放送技術研究所の一般公開ではこの誤り訂正符号を実装した試作装置を展示する。

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