写真1●ソフトバンクモバイルの常務執行役員 渉外本部 弓削哲也本部長
写真1●ソフトバンクモバイルの常務執行役員 渉外本部 弓削哲也本部長
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写真2●2GHzは800MHzと比べて6割以上のコスト増になるという
写真2●2GHzは800MHzと比べて6割以上のコスト増になるという
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写真3●ネットワーク外部性追加料金の概念図
写真3●ネットワーク外部性追加料金の概念図
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 ソフトバンクは2009年5月15日,総務省で議論が進んでいる接続ルールの見直し(関連記事)について会見を開き,電波の周波数によって設備コストに大差はないというNTTドコモの意見に反論した。総務省が新たな接続料算定のガイドラインを作るという見通しが広がる中で,ソフトバンクの接続料を下げる方向性に歯止めをかけたい考えをにじませた。

 「ドコモに800MHzを割り当てる必要はない」。挑発的な表題を書き入れたスライドを表示しながら,ソフトバンクモバイルの常務執行役員 渉外本部 弓削哲也本部長(写真1)は,「NTTドコモは(800MHzと2GHzで設備コストの)差がないと強調しているが,我々は差があると考えている。(NTTドコモが言うように)差がないのであれば,今後割り当てる800MHzの周波数帯は我々がいただいてもいいのでは」と周波数割り当ての議論に話を拡大し,対立する姿勢をあらわにした。

 議論の発端は,NTTドコモがソフトバンクモバイルの接続料が高すぎると訴えたこと(関連記事)。携帯電話の接続料とは,ネットワークを相互接続する場合に,通話料を徴収する事業者が,もう一方の事業者に支払う利用料金のこと。NTTドコモによると,ソフトバンクモバイルの接続料はNTTドコモに比べて約3割高く,1年間で100億円の差額が生じるという。これに対して,ソフトバンクの孫正義社長は,総務省の公聴会で「保有する周波数帯が違えば,接続料水準は同一にならない」と主張。その後,NTTドコモは「800MHzと2GHzのコスト差はない」と意見表明した(関連記事)。今回はソフトバンクがNTTドコモに再反論をした格好だ。

ソフトバンク算出では2GHz帯のコストが6割増

 ソフトバンクによると,都市部での800MHzの電波が届く距離は2GHzと比べて1.1倍。地形が平坦な住宅地では3倍,凹凸が多い山間部では2倍になるという。住宅地や山間部の基地局コストは都市部の8~9割程度に下がることを考慮に入れても,2GHzは800MHzと比べて「6割以上のコスト増になる」(弓削本部長)(写真2)。NTTドコモは,2GHzの電波は地方部では届きにくいものの,基地局のコストが都市部の3割程度で済むため,コスト差は5%に留まるとしている。「地方では鉄塔などの付帯設備工事がかなりの額になる。ドコモはそうした金額が少ない特殊な例で算出したのではないか」(弓削本部長)と算出方法の相異を指摘した。

 接続料原価の算定方法についても,各社で差が生じている。接続料は基地局など設備コストのほか管理費などを足し合わせて算定するが,NTTドコモやKDDIは販売奨励金など営業費も算定のコストに加えている。ソフトバンクは営業費ではなく,ネットワーク外部性追加料金という名目で,携帯電話を持っていない人に販売するためのコストを接続料原価に足している(写真3)。このネットワーク外部性追加料金は,携帯電話の普及拡大やネットワークを維持するための補助金という位置付けで英国でも導入されており,適正なコストであるとソフトバンクは主張する。

 現状で,第二種指定電気設備の規制対象であるNTTドコモとKDDIは接続約款の届出が必要であるのに対し,ソフトバンクは接続料の算定コストを公開する義務はない。NTTドコモは,情報公開のために全事業者を二種指定にすべきと主張しているが「既にソフトバンクは数値をオープンにして接続料の原価について公開しているため,二種指定にする必要はない」(弓削本部長)と見解を示した。