UML教育研究所は2009年5月末に,BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)に関する認定資格制度「OCEB(OMG-Certified Expert in BPM Program,オーセブ)」を開始する。オブジェクト指向やモデリングに関する標準化団体の米OMG(Object Management Group)と共同で作成した全世界共通の認定資格で,BPMを進める上で必要な知識やスキルを問うもの。5月末に英語版の認定試験を開始し,10月をメドに一部を日本化して実施する予定。

 BPMは,可視化した企業のビジネス・プロセスを,基幹系をはじめとする情報システムと連携させて管理し,ビジネスの変化に即応できるようにすること。SOA(サービス指向アーキテクチャ)と併せて,経営(ビジネス)とITの一体化を推進するのが狙いだ。

 OMGはビジネス・プロセス記述言語のBPMN(Business Process Modeling Notation)や関連する標準仕様を策定しているほか,BPM Consortiumによる普及・啓蒙活動を進めている。OCEBはこうした活動を通じて得た成果を基に作成した。OMGの認定資格としては,UML技術者向けのOCUP,組み込み技術者向けのOCRESに続いて三つめとなる。

 OMGのリチャード・ソーリーグループCEO(最高経営責任者)は「OCEBにより,企業の中で誰がBPMのスキルを持っているかがわかりやすくなる」と利点を話す。UML教育研究所の山本哲也取締役は「BPM市場が成長しているにもかかわらず,BPMを推進できる人材が足りないのが現状。人材を育成するために,スキルに関する標準が求められている」と説明する。

 OCEBは(1)ファンダメンタル,(2)ビジネス インターメディエイト,(3)テクニカル インターメディエイト,(4)ビジネス アドバンスト,(5)テクニカル アドバンストという5つの資格で構成。(1)が入門編,(2)(3)が中級編,(4)(5)が上級編の位置づけである。(2)(4)はビジネス側のリーダーやメンバー,(3)(5)はIT関連を担当するチームのリーダーやメンバーが持つべき知識やスキルを扱う。

 特徴はビジネス・プロセスの書き方だけでなく,BPMに関連する周辺のスキルや技術を重視していること。「BPMNでどう書くかだけなら,簡単に習得できる。試験ではモデリングに直接かかわる設問は2割に満たない」(山本氏)。ファンダメンタルなら,「ビジネスのゴールとオブジェクティブ」「ビジネスプロセスの概念と基礎」「ビジネス・プロセス・モデリングのスキル」「プロセスの品質,測定,ガバナンスに関するフレームワーク」などの分野から出題する。

 設問は「機械的に答えられるものと,じっくり考えないと答えられないものがある」(山本氏)。ファンダメンタルの設問例として,4択式の「プロセス指向組織の特徴は?」を挙げる。試験は指定のテスト・センターでCBT(コンピュータを使った試験)形式で受ける。試験時間は英語版の場合90分。非英語圏で英語版を受験する場合は最大120分まで延長される。

 英語版はすでに(1)から(5)のすべてを提供済み。日本語版は当初は(1)のみで,「中級編と上級編は今後検討していく」(UML教育研究所の吉野晃生代表取締役)という。受験料は英語版は「OMGの世界標準の料金」(同),日本語版は3万1500円。米国では200ドルである。UML教育研究所の親会社であるデジタルデザインが6月からOCEB対策の教育コースを実施する予定だ。