独SAPは2009年5月12~14日(現地時間)に米オーランドで開催中の年次カンファレンス「SAP SAPPHIRE 2009」で、サステナビリティ(持続可能性)に注力する方針を明らかにした。サステナビリティとは、企業経営において環境問題などを考慮しながら、持続可能な社会を作っていくことを指す。企業のサステナビリティ活動を支援する製品を投入するほか、同社自身がサステナビリティに取り組む。サステナビリティを担当するSAPアメリカのスコット・ボリック氏(写真)は「ソフトウエア企業の社会的責任」と強調する。
SAPPHIRE 2009では、顧客企業がサステナビリティ活動を実現するうえで取り組むべき分野を整理して図にまとめた「サステナビリティ・ソリューションマップ」を公表。「サステナビリティ・パフォーマンス・マネジメント」「環境、健康安全管理」「エネルギー、炭素」「製品安全と管理」「持続可能なサプライチェーン」「持続可能な人員」「情報システム」の7つの領域を挙げている。ソリューションマップは情報システムが必要な分野以外も対象とする。「企業内でサステナビリティについて語り合う際の基礎にしてほしい」とボリック氏は話す。
ボリック氏はサステナビリティ関連製品について「すでに提供しているが、まだ足りない部分もある。今後、新たな機能を提供していく」と説明する。ERP(統合基幹業務システム)パッケージやCRM(顧客情報管理)、SCM(サプライチェーン管理)ソフトなどを統合した「SAP Business Suite(BS)」向けに順次、サステナビリティの実現に必要な機能を提供する計画だ。SAPは年に1~2回、SAP BS向けに「エンハンスメントパック」と呼ぶ無償の機能強化パッケージを提供している。この中でサステナビリティ関連機能を追加することになる。
このほか「SAP BSに属さない新製品も出していく」(ボリック氏)。5月11日に買収を表明したソフトウエアベンダーの米クリアスタンダーズが提供する、二酸化炭素の排出量を管理支援ソフトがその例だ。クリアスタンダーズの製品は、企業内で排出する二酸化炭素といった地球温暖化に影響する情報を取得し、発生要因の分析やレポートの作成を支援する。「これからは法規制の強化により、排出量を単に管理するだけでなく、発生原因や時系列の情報を取得しておくことが企業に求められる」とボリック氏は説明する。クリアスタンダーズの製品はSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供する。
SAP自身の取り組みでは「社員一人ひとりの二酸化炭素の排出量を測定する仕組みを用意している」(ボリック氏)。米パロアルトの拠点にシャープのソーラーパネルを設置したり、出張の回数を削減するためにTV会議システムを導入したことなどを明らかにした。