政府が推進する次世代スーパーコンピュータ・システムのプロジェクトの構想に暗雲が立ち込めている。2009年5月14日、NECが製造工程からの撤退を表明したことで、当初予定していたスカラ部とベクトル部の複合システムは実現が難しくなった。NECとの契約を通じて参加していた日立製作所もNECの離脱を受けて、事実上、撤退となり、今後のプロジェクト推進は富士通1社に委ねられることになりそうだ。

 次世代スーパーコンピュータ・システムは、理化学研究所が中心となって、一秒間に一京回(10ペタFLOPS)の計算ができるスパコン「京速計算機」を2010年をメドに開発するプロジェクト(完成は2012年)。スカラ部を担当する富士通とベクトル部を担当するNECと日立による複合システムを予定していた。

 ベクトル部の中心となって開発していたNECが撤退を表明したことで、理研は「現実的に考えて複合システムの開発は困難になった」(次世代スーパーコンピュータ開発実施本部)との認識を示す。日立も「ベクトル部の開発を当社単独で担当することは不可能と判断している」(広報)という。

 日立はNECと契約してプロジェクトに参加している。理研との直接的な契約関係はないため、現段階ではNECとともに本件から撤退することになる。今後、日立が理研との直接契約に及ぶかは決まっていない。「理研から相談があれば協力していく意思はある」(広報)とした。

 一方、富士通は今後、NECと日立の協力なしに次世代スーパーコンピュータを製造する可能性が高い。今後の取り組みについて富士通は「現時点では従来通り開発を続ける」(広報)としている。

 理研は「技術的にはスカラ部だけでも十分に10ペタFLOPSの実現が可能」(次世代スーパーコンピュータ開発実施本部)としている。