NECは2009年5月14日、政府が推進する次世代スーパーコンピュータ・システムのプロジェクトから離脱すると発表した。業績悪化に伴う経営基盤の再構築が急務となっており、投資負担が重いプロジェクトの継続は困難と判断した。現時点ではスパコン事業自体は継続する方針だが、微妙な影をおとしそうだ。

 次世代スーパーコンピュータ・システムは、文部科学省が推進する「次世代スーパーコンピュータ・プロジェクト」の一環。世界最高性能のコンピュータ開発を目指し、独立行政法人の理化学研究所が中心となって、NECのほか富士通、日立製作所と2006年9月から開発を進めていた。

 開発は大きくシステムの設計段階と製造段階に分かれ、2012年の完成を目指している。設計段階を終え、今後は製造段階に入る状況だった。ベクトル部の開発を担当していたNECは5月13日、業績悪化を理由として理研へ巨額の投資が必要な製造段階への不参加を申し入れた。事実上、システム開発チームから離脱する。今後は「本体機器の製造ではなく、将来の高速計算機アーキテクチャの研究、他の研究機関とのアプリケーションソフトの展開支援などを中心に貢献していく」としている。

 理研はシステム構成を見直す。システム開発は当初の計画通り、2012年の完成を目指す。

 NECが5月12日に発表した2009年3月期決算は、2966億円の最終赤字(関連記事)。不採算事業の見直しが急務となっていた。