米IBMは米国時間2009年5月13日,リアルタイムで発生する膨大なデータを高速で解析できるデータ分析ソフトウエアの新版「System S」を発表した。

 データベースに蓄積したデータを改めて分析する従来の処理モデルと異なり,構造がさまざまに異なる膨大な種類のリアルタイム・データを即座に解析し,現状分析,予測,意思決定などに直ちに生かせるのが特徴。同社はこうしたデータ処理形態を「ストリーム・コンピューティング」と呼んでいる。

 政府機関,金融機関,小売業者,医療機関など,刻々と変化する状況を直ちに把握して対応する必要がある組織に適している。同ソフトウエアを試験採用した企業や学術機関での活用事例としては,宇宙電波の解析,海洋生態系の調査データのリアルタイム処理,データ処理能力を従来の21倍に高めたオプション取引システムのプロトタイプ開発,危険な状態の未熟児の容体変化の早期発見などがあるという。

 同ソフトウエアは,同社研究開発部門IBM Researchが5年間をかけて開発し,200件以上の特許技術を使用した。米メディア(InfoWorld)の報道によると,同ソフトウエアはLinuxサーバーのクラスタ用として設計されており,標準価格は約40万ドルだが,システムの規模に応じて10万~100万ドルほどの範囲で変わるという。

 IBMは,同ソフトウエアの機能や処理能力を知ってもらうための試用版を無償で提供する。この中には,開発者用のツールやテスト用のソフトウエアなどが含まれている。

 同社はまた,欧州でのストリーム・コンピューティングの調査,顧客サポート,テストの拠点となる「IBM European Stream Computing Center」をアイルランドのダブリンに開設することも併せて発表した。

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