情報通信審議会情報通信政策部会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」は2009年5月13日に第52回会合を開催した。今回の会合では,事務局が2009年度補正予算案に盛り込まれたデジタルコンテンツ制作・流通強化策関連予算の内容を説明して,それを基に委員がそれぞれの立場から意見を表明した。

 2009年度補正予算案には,放送事業者や番組制作会社が各地の物産や観光資源などを紹介するコンテンツを制作したり,放送やインターネットを介してコンテンツを発信するモデルの構築を支援したりするための費用として,52億円が盛り込まれた。その用途は,(1)放送コンテンツの制作・流通の促進,(2)放送コンテンツの権利処理の円滑化の促進,(3)放送コンテンツの不正流通に関する監視・通知システムの検証――である。

 (1)については,地域の自然や文化など各地域に根ざしたコンテンツの制作とその発信に取り組む放送事業者を支援する取り組みを行う。(2)に関しては,放送コンテンツのマルチユース展開の基盤として,権利処理の一元化を促進するための実証実験を行う。(3)は違法コンテンツの撲滅に向けて,共同監視や通知を行うシステムの実現に向けた検証を行う。

 続いて,権利者団体関係の委員である堀義貴氏(日本音楽事業者協会常任理事,ホリプロ代表取締役会長兼社長)は,民間による放送コンテンツの権利処理の円滑化に向けた取り組みを報告した。音事協など3団体が2009年5月中に設立予定の「映像コンテンツ権利処理機構(仮称)」の概要などを説明した。この団体は,「映像コンテンツの二次利用に関する許諾申請の受け付け」や,「映像コンテンツに関する不明権利者の探索,通知」などの事業を行う。「インターネットなどの配信の円滑化などのニーズに応えるための準備をするための団体」(堀氏)という。

 事務局と堀氏の報告を受けた委員からは,「国は今回の取り組みを契機に,どのように回せばコンテンツ配信ビジネスが成立するかを検討すべき」(放送関係の委員),「権利者団体の取り組みに敬意を表したい」(ITベンダー関係の委員)といった意見が出た。委員会の主査で慶応義塾大学教授の村井純氏は,「事務局は今回の意見を踏まえたうえで第6次答申の骨子案の制作に取り掛かってもらいたい」と述べた。