スカパーJSATは2009年5月12日、クラウド型のストレージサービスを発表した。データを7地域8カ所のデータセンターに分散して保管する。衛星放送・通信の技術を応用し、データは暗号化したうえで断片化して分散配置する。高いセキュリティと障害耐性を確保できるという。同社がITサービスを提供するのは初めて。技術を水平展開してITサービスに参入することで、新たな収益源を確保する考えだ。

 名称は「S*Plex3(エスプレックススリー)クラウド・ストレージサービス」。データセンター事業者向けの「Cloud 40」と、システムインテグレータ向けの「i-SPlex」の二つのメニューを展開する。一般企業はこれらの企業を通じてS*Plex3クラウド・ストレージサービスを利用する形態となる。データセンター事業者、システムインテグレータ向けの卸売料金は非公開。

 Cloud 40は6月に提供を開始する。伊藤忠テクノソリューションズ、北海道総合通信網、インターネットイニシアティブ、ビック東海、インテックへの提供がすでに決まっている。この5社は今回のサービスで、スカパーJSATに対してデータセンター設備を提供する立場でもある。i-SPlexは8月から提供する予定だ。

 今回のサービス提供に当たり、スカパーJSATは衛星放送・通信の誤り訂正技術「消失訂正符号」を応用した。これは降雨によりデジタルデータをただしく受信できなくても、残りのデータから元データを復元する技術である。この技術を応用して、今回のストレージサービスで高信頼を確保したデータの分散配置を実現した。誤り訂正技術により、複数のディスク装置が故障したり、1~2カ所のデータセンターがアクセス不能になってもデータを復元できる。

 加えて、新技術として「自律協調動作型情報分散ネットワーク」を開発した。データの断片化・分散配置において、RAID方式のような特定サーバーでの集中管理ではなく、多くのサーバーが自律的、協調的に分散管理する。そのため、一部のサーバーに障害が生じてもデータ分散配置の管理機能は支障なく動作する。