写真1●一部を暗号化した印刷物
写真1●一部を暗号化した印刷物
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写真2●カメラ付き携帯電話で文書を復号化したところ。「品名」欄に「携帯市場調査結果」と表示している
写真2●カメラ付き携帯電話で文書を復号化したところ。「品名」欄に「携帯市場調査結果」と表示している
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 富士通は2009年5月12日、暗号化した印刷物をカメラ付き携帯電話から閲覧する技術を開発したと発表した。同社は「世界初」としている。利用者ごとに閲覧可能な個所を指定できるので、外出先でも情報漏洩を心配せずに紙媒体を扱えるという。2010年度を目標に製品化する計画だ(写真1写真2)。

 携帯電話のカメラで撮影する際に生じる手ブレや歪みへの対策として、「画像選択フィルター」と呼ぶ新技術を開発した。同技術は、入力画像の中から手ブレや歪みの発生した画像を取り除き、復元可能な画像のみ選択する。この技術を使うことで復号処理にかかる時間を数秒程度に短縮し、ストレスのない利用を可能にした。

 従来手法では、手ブレが生じた画像にも復号処理を施してから復号の成否を判断していた。そのため、画像の復号に6秒かかるケースでは、入力画像の最初の4枚に手ブレなどが発生した場合、復元可能な5枚目の復号処理が終わるまでに約30秒を要した。画像選択フィルターを使えば、入力画像を選択する処理が発生するが、「選択処理自体は軽いものなので、従来手法で1枚目から復元可能な画像が入力された場合と比較しても、遅延はほとんど生じない」(富士通研究所の伊藤隆 画像・バイオメトリクス研究センター主席研究員)とする。

 富士通は昨年12月、文書の一部が暗号化された印刷物や文書ファイルを、パソコンで復号化して閲覧する製品を発表した。だが、「印刷物の場合、スキャナでパソコンに取り込まなくてはならず、利用できる場面が限られていた」(伊藤主席研究員)。