写真1●ソフトバンクの孫正義社長
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写真2●設備投資の計画
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 ソフトバンクは2009年4月30日,2008年度通期の連結決算を発表した。売上高は前年度1031億円減の2兆6730億円,営業利益は同348億円増の3591億円の減収増益だった。営業利益は4月10日に上方修正した予想を上回り(関連記事),過去最高益を記録。前年度に1642億円のマイナスだったフリー・キャッシュ・フローは,1815億円のプラスに転じた。

 同社の孫正義社長(写真1)は,「(ボーダフォン買収に伴う2兆円に近い)借金が大きすぎると言われてきたが,今回の決算でフリー・キャッシュ・フローを十分確保でき,着実に返済できるメドが立った」と説明。2011年度に純有利子負債を半減し,2014年度にはゼロにすると宣言した。

 2009年度の業績予想は,2008年度の中間決算時に示した営業利益4200億円,フリー・キャッシュ・フロー2500億円を据え置いた(関連記事)。売上高の増収も見込み,2009年度は増収増益を予想する。

 個別の分野では,売り上げの大半を占める移動体通信セグメントで,端末販売の減少によって売上高は2007年度の1兆6189億円から1兆5547億円に減った。ただし通信料の売上高は1兆171億円から1兆312億円と増収基調とする。ARPU(加入者一人当たりの平均月額収入)は,音声ARPUの減少によって前年から580円減の4070円となった。ただデータARPUの伸びが堅調であるため,「2009年度は反転するのではないか」(孫社長)という見通しを示した。

 解約率は2007年度の1.32%から1.00%まで下がった。2009年度の予想は,2010年3月に予定する第2世代携帯電話の終了に伴って,解約率増加が見込まれるため「1.00%よりも若干上向くかもしれない」(孫社長)と予想する。

負債ゼロまで大規模投資を凍結,LTEへの投資も現行レベルで可能

 2014年度に純有利子負債をゼロにすると宣言する一方,孫社長は負債がゼロになるまでは大規模投資を凍結する方針も明らかにした。投資を抑えてフリー・キャッシュ・フローを生み出し,それを返済に充てる考えだ。2008年度の設備投資金額は2590億円であり,2009年度は2200億円程度を見込む(写真2)。「設備投資のピークは過ぎ,これから刈り入れの時期に入る」(孫社長)という考えを示した。

 一方で移動体通信の分野では,次世代携帯電話システムであるLTE(long term evolution)への投資が控える。孫社長は,「設備投資の大半は鉄塔で,ハイテク機器は実は安い。LTEの投資はトータルで1000億円以上はかかるが,数年間かけてネットワークを広げる。その間,現行の3Gの追加投資はいらなくなるため,毎年の設備投資費は現行と同程度になる」と説明した。

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