政府は2009年4月28日朝,急速な感染拡大が懸念される豚インフルエンザに対し,「新型インフルエンザの発生が認められた」と発表した(首相官邸のサイト)。WHO(世界保健機関)が「フェーズ3」から「フェーズ4」への移行を宣言したことを受けたもの。

 フェーズ4とは,もともと動物間または動物-ヒト間でしか感染しなかったインフルエンザ・ウイルスが変異し,「ヒト-ヒト感染が継続してコミュニティレベルの発生を引き起こしている」(厚生労働省のサイト)状態を指す。豚インフルエンザの感染者や死亡者がメキシコ国内で急速に増えているほか,海外での感染者も相次いで発見されたことから,WHOはジュネーブで4月27日(現地時間)に開催した緊急委員会で,現状をフェーズ4であると判断した。

 企業の危機管理において新型インフルエンザは,地震をはじめとする従来のリスクと異なり,事業の縮退や社員の多くが出勤しないことを前提とした事業継続マネジメント(BCM)が必要になる,という特徴がある。IT部門には,特にコミュニケーション手段の確保を中心とするシステム・インフラの検証・整備が求められる。政府は既に,フェーズ4以降を想定した「新型インフルエンザ対策ガイドライン」(新型インフルエンザ専門家会議,2007年3月26日)を策定し,医療機関や企業,一般家庭など各方面に対策を呼びかけているが,企業の対策はまだ十分に進んでいないのが現状だ。

 いったん新型インフルエンザの感染者が国内に流入すると,その後の感染拡大はごく短期間で進むと専門家はみている(国立感染症研究所 感染症情報センターの大日康史氏によるシミュレーションを参照)。日本では現時点で感染者が発見されていないが,見つかってからの対応には限度がある。企業は海外で展開する事業や社員の海外渡航に注意する(関連記事)ことはもちろん,日本での感染者発生を視野に,事業継続に向けた早急な情報収集と対策の準備に取り組むことが求められる。