「ad:tech San Francisco 2009」のオープニングを飾る4月21日の基調講演は、「Wikipedia」の創設者ジミー・ウェールズ氏。同氏は「Wikipedia、Wikia、そして消費者が作る未来のコンテンツについて」というテーマで、消費者作成コンテンツとブランドマーケティングについて語った。ウェールズ氏は、「Wikipediaは史上最大の百科事典である」と言い、何十万人ものボランティアによって自由に書かれ、編集され、それらが自由にほかのサイトで使われたり、コピーされたり、配信されてもよいものとしている。

会場に質問をするWikipedia創設者のジミー・ウェールズ氏
会場に質問をするWikipedia創設者のジミー・ウェールズ氏

 現在、Wikipediaは1110万件の記事、トータルで280もの言語を扱い、世界で第4位の人気Webサイトであるという。そして、英語版の記事はWikipedia全体のコンテンツの20%以下であり、Wikipediaがいかにグローバルに広がっているかを伝えた。ほかの主要言語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ポーランド語、日本語、オランダ語で、現在はそれぞれが50万件以上の記事がある。これらに続くのが、ポルトガル語、スペイン語、ロシア語、スウェーデン語で、記事は約25万件を超えているという。

 Wikipediaの成功は、決してテクノロジーが優れているからとか、大人数で運営しているからではないという。二十数人のスタッフが、記事を書いたり編集したりするボランティアコミュニティをサポートし、どのような社会的なルールを使うかなどを検討し、それをいかにテクノロジー化していくかに気を付けた結果、多くのボランティアが自ら活動し、問題があれば解決する自律的なコミュニティが出来上がった。

 ウェールズ氏は、その経験を使って、Wikiaという企業のWebサイトで消費者作成コンテンツを利用できるようにするビジネスを2004年にスタートさせた。例えば、コミック会社の米マーベルのサイトでWikiを運営し、その結果、同社のコミックに関する5万件近くの記事が作成され、その記事に多数のリンクが張られた結果、検索エンジンでも高いランキングに入っている。

 消費者作成コンテンツと企業のブランディングをつなげる新しいサイト構築モデルを提案し、社会的なルールをうまく利用すれば、消費者作成コンテンツは決して企業にとって怖いものではないということを実例も含めて示した講演であった。