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 「独自仕様にこだわり、職人芸でシステムを作る時代は終わった。スタンダードの技術や既存パッケージを活用することで、システムの開発費用は削減できる。企業はビジネスを差異化できるところに集中すべきだ。こうした世界を実現することが我々のミッションであり、そのために企業買収を続けている」。4月24日、東京国際フォーラムで開催中の「Oracle OpenWorld Tokyo」の基調講演で、米オラクルのチャールズ・フィリップス社長(写真)は、企業買収を続ける背景についてこう語った。

 米オラクルは過去5年間で55社を買収。4月20日には米サン・マイクロシステムズの買収を発表したばかりだ。サンという名称は出さないものの、「企業買収はあくまでイノベーション(革新)を補完する手段の一つに過ぎない。今週始めに実施した買収のように、顧客に価値を届けるために必要ならば、企業買収を続けていく」とフィリップス社長は明言する。

 フィリップス社長は、今後の同社の方向性も示唆した。それが、キーワードの一つとして掲げる「完全性(complete)」である。製品そのもののを向上させるだけでなく、製品群としての品ぞろえを完全にすることを狙う。そのために、米オラクルは研究開発に年間30億ドルを投資しているが、それでも足りないために企業買収があるというのだ。

 フィリップス社長は「アプリケーションにしろ、ミドルウエアにしろ、一つのアーキテクチャに基づいた完全な品ぞろえでなければ、顧客に価値を提供できない」と説明する。セキュリティを例に取ってみても、個々のコンポーネントを組み合わせて個別に実施するより、統合された環境を利用する方が短期間で安全性を確保しやすい、という。

 「完全であれば、システムの世界であっても、企業は積極的に既製品を使えるようになる。日本市場は特に、独自仕様でアプリケーションをゼロから開発することが多い文化だということは知っている。しかし、この金融危機をきっかけに、多くの企業が既製品を使うことに興味を抱いているはず。このニーズに応えるために、我々がいる」とフィリップス社長は続ける。

 フィリップス社長によると、昨年、データベースのシェアが、米マイクロソフトと米IBMのシェアを足した数字を上回ったという。「ミドルウエアでも世界ナンバーワンの企業になり、昨年にはハードウエアの世界に入った。今後は、業界を変えることが我々のミッションになる」とフィリップス社長は講演を締めくくった。