写真●KDDI研究所開発センターの小塚宣秀氏
写真●KDDI研究所開発センターの小塚宣秀氏
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 「ライフログ・データの活用で,ユーザー中心型の新しい携帯サービスが始まる」,2009年4月23日,KDDI研究所開発センターの小塚宣秀氏(写真1)が「ライフログ・サミット」で「ケータイから見たライフログ活用の可能性」と題して講演した。小塚氏は携帯電話におけるライフログ活用のポイントとして,(1)取得するデータの種類と粒度の選択,(2)ユーザーに使いやすいサービスの実装,(3)セキュリティやプライバシーへの配慮,(4)携帯電話の性能,などを挙げた。

 ライフログの代表的な研究は2002年から2003年頃に始まった。例えば米国では国防総省が実施していた「LifeLog」,マイクロソフトの「MyLifeBits」,日本では情報通信研究機構(NICT)の「ユビキタスホーム」,東京大学の相澤研究室の研究などがある。KDDI研究所では,2003年から総務省の委託研究「Ubilaプロジェクト」の一部としてライフログの研究を始めたという。

携帯側から必要なサービスを提案する

 当時は,端末の性能向上,データ通信の高速化や定額制サービスの普及によって,高機能で便利な携帯向けサービスが多数登場した頃でもある。とはいえ,「ユーザーから見ると,小さな携帯電話にあまりに多くのサービスが盛り込まれたため,使いこなせないという課題があった」(小塚氏)。これからの携帯は「ユーザーと,その周囲の実空間の間に立って仲介してくれるような存在になる。『操作する携帯』から『対話する携帯』へ変化していく」(同)。

 その実現手法の一つがライフログを活用したサービスというわけだ。ライフログとは,ユーザーの日常生活の履歴をデジタル化して記録したデータを指す。「人の行動によって発生する情報はすべてライフログになりえる」(小塚氏)。加速度センサー,GPS,デジタル・カメラなどを備え,ユーザーが常に持ち歩く携帯電話は,ライフログ取得装置としてはかなり有望だという。「ユーザーの行動も,周囲の実空間の環境も把握した携帯が,より適切なタイミングで,ユーザーに合ったサービスを提供するようになるだろう」(同)。

 同時に,「携帯電話サービスはユーザー中心に変わる」(小塚氏)。従来の携帯電話サービスでは,サービスごとに全ユーザーのデータをまとめて管理することが多い。個々のユーザーは自分が何をしたかを知っているが,サービス側からは大きなユーザー集合の全体的な傾向しか見えない。「今後は,複数のサービスをまたいでデータを組み合わせて,特定のユーザーの状況に応じたサービスを携帯電話側から提案できるようにする」(同)。もちろん,物理的に複数サービスのデータを一つにするわけではないが,概念的にはユーザーを中心にデータが集約されていくという。