写真1●ウィルコムの喜久川政樹社長(左から3人目)
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写真2●試験サービスは山の手線内の一部地域に止まる
写真2●試験サービスは山の手線内の一部地域に止まる
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写真3●端末はPCMCIAタイプを2機種用意
写真3●端末はPCMCIAタイプを2機種用意
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 ウィルコムは2009年4月22日,次世代PHS「XGP」(関連記事)の試験サービスを4月27日から段階的に開始すると発表した。

 第1段階として4月27日から,ウィルコム本社内などでのデモ展示を開始。さらに共同で実証実験を行うパートナー企業へ専用のデータ通信カードを無償で貸し出す。続く第2段階として6月以降に,MVNO(仮想移動体通信事業者)のパートナー企業や一般企業のモニター約500人に対してデータ通信カードを無償貸与する。一般ユーザーからはモニターを募集しない。試験サービス期間のサービス料金は無料で,エリアは山の手線内の一部地区となる。これらの試験サービスを経て,秋以降に正式サービスを開始する計画だ。

 同社の喜久川政樹社長(写真1)は,XGPの強みとして「マイクロセルを採用することによって速度が落ちにくく,カタログスペックに近いスピードが出る点」を強調。発表会上でXGPの速度テストを披露し,最大で上下20Mビット/秒のカタログスペックに対して,下りで18Mビット/秒,上りで12Mビット/秒程度の実効速度が出ている様子を見せた。

 試験サービスを段階的に進めるのは,「かつてPHSを立ち上げた時,様々な問題が発生して,電波を一端停止した苦い経験がある。ネットワークの世代が大きく変わるときは慎重に進める必要がある」(喜久川社長)ため。今回,モニターとして一般ユーザーを対象としない点については,「試験サービス期間中に様々な改良を重ね,一般ユーザーに提供するときには十分なスペックが出るようにしたいから」と答えた。

 試験サービス期間中のエリアは,山の手線内でも東京や新宿,渋谷,品川などかなり限定した地域になる(写真2)。喜久川社長は,「既に基地局は100局程度を設置済み。6月までに数百局に拡大していく。しかしエリアを無闇に広げるのではなく,あえて高密度なマイクロセルを設置して,そこで何ができるのかを検証をしていく」とした。

 試験サービス用の端末としては,NECインフロンティア製とネットインデックス製のPCMCIAカードタイプを用意した(写真3)。前者がカナダのウェッブサット社,後者がイスラエルのアルテア社のチップセットを利用している。いずれもモバイルWiMAXのチップセット・ベンダーであり,モバイルWiMAXのチップをベースに短期間でXGP向けに改良したという。

 10月以降のエリア展開や正式サービスの内容は,今回の発表会ではほとんど明らかにしなかった。今後のエリア展開について,「基本的には総務省に申請した開設計画に沿って進める。エリア限定の試験サービスを進めた上で,具体的な展開計画を詰めていく」(喜久川社長)とした。本年度の設備投資金額は,200億から300億程度と例年とほぼ同水準で,基本的には現行のPHSサービスのキャッシュフローでまかなえる範囲という。一方で同社の筆頭株主であるカーライル・グループとは,増資の話し合いをしているのも事実とした。

 なお,同社のXGPサービスへMVNOの申し込みをしているパートナーは,現在80社に上るという。発表会ではパートナー企業と進める計画の実証実験をいくつか紹介した。JCBやアサツーディ・ケイなどとはデジタルサイネージの実証実験を,フジテレビジョンとは報道取材用のネットワークとしての活用を実験する予定という。

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