図 ライセンス発行・管理機関の全体相関図(配布資料より)
図 ライセンス発行・管理機関の全体相関図(配布資料より)
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 情報通信審議会情報通信政策部会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」は2009年4月22日に,技術検討ワーキンググループ(WG)の検討状況を報告した。技術検討WGは,地上デジタル放送受信機などに対してコピー制御ルールを順守させる手段である「エンフォースメント」の見直しについての議論を行っており,今回の会合で中間報告を公表した。

 技術検討WGは2009年2月26日の第49回会合でも,検討状況を報告した。委員会の主査で慶応義塾大学教授の村井純氏は会議の冒頭で,中間報告が同会合での報告と異なる点を説明した。「今回は報告ではコンテンツ保護に関する技術仕様を開示する方式に重点を置いた。さらにチップ方式とソフトウエア方式を区別するのをやめたほか,新方式のライセンス機関についての資料を添付した」という。

 中間報告では,まず現行のB-CASカードを用いたエンフォースメントと並ぶ新たなエンフォースメントの選択肢を拡大するための検討を進めるうえで,基本的な考え方を四つ提示した。その内容は,(1)新たなエンフォースメントではコンテンツ保護に関するルールを順守する者に対して,コンテンツ保護の技術仕様の開示を制限しない方法を検討する,(2)基幹放送という性質上,善意の視聴者に影響を与えるような運用上のオペレーションは行わない,(3)新たなエンフォースメントにおけるライセンス発行・管理機関は非営利かつ透明性の高い法人であるべき,(4)技術と契約によるエンフォースメントでは対応できない範囲の対処の在り方については制度的対応を検討する――である。当日の会合では,(3)のライセンス発行・管理機関の全体相関図が資料として配布された(図)。

 技術検討WGは,今後の検討の進め方について,「新方式の(エンフォースメントの)早期運用開始を目指して,まずは技術と契約によるエンフォースメントにより対処できる範囲の検討を進める。そのうえで内容の早期明確化を図る」とした。その後,「新方式の運用開始までに適切な場で,現行の法制度の実効性を検証したうえで,補完的制度の要否を含めて検討を進める」と今後の方針を提示した。

 なお新たなエンフォースメントの技術と契約についての検討状況については,事務局から口頭で報告された。技術方式については,「既存のデジタル放送受信機との互換性確保」や「三つの鍵データで放送コンテンツを保護する『三重鍵方式』を採用」,「ユーザーの利便性確保」,「既存のエンフォースメントとの整合性確保」,「有料放送に影響を与えない」などを前提として議論が進んでいる。なお三重鍵方式は,現行のB-CASカードを用いたエンフォースメントでも採用されている。一方,契約については,「(放送のスクランブルを解除する)鍵データが漏えいした際に,それが故意ではなく過失によって起こったのであれば,メーカーに過大な負担を負わせないようにする」といったことを念頭に置いて議論が進められているという。

 今回の報告を受けて,消費者団体関係の委員から,「何度も同じような図を見せられて,同じような意見を聞かされている。なぜ新たなエンフォースメントの選択肢をつくることについて関係者で合意ができないのか」,「早く(議論の)プロセスを進めて欲しい。将来,どのような(エンフォースメントに対応する)地上デジタル放送受信機が実現するかが見えないと,買い控えが加速する」といった厳しい意見が出た。

 これに対して技術検討WGに参加する放送関係や受信機メーカー関係の委員は,「遅々として進まないように見えるかもしれないが,我々は懸命に議論を進めている」,「技術の公開性や運用上のオペレーションの在り方など積極的に議論を進めており,一定の方向性は出ている。商品企画の自由につながるので,一刻も早い実施を大前提としている」と述べた。