写真●報道陣を前に陳謝する三菱UFJ証券の秋草史幸社長(中央)と前田孝治常務(右)
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 三菱UFJ証券システム部の部長代理だった元社員(2009年4月8日付で懲戒解雇処分)が顧客情報約148万人分を不正に取得し約5万人分を売却した事件(関連記事)で、顧客情報を入手した業者は4月17日までに計80社に拡大したことが同社の調査で分かった。一部の業者は同社が顧客情報を使用しないように要請しても同意していないといい、さらに業者数が拡大する恐れがある。

 調べによると、元社員は不正に取得した顧客情報を名簿業者3社に売却し、名簿業者が14社に転売。名簿業者のうち1社は最大100人分の氏名や住所、勤務先などが記載された「サンプル」を15社に提供していた。また、同社の顧客からの情報に基づいて調査したところ、さらに48社に名簿が転売された可能性があることが判明した。

 名簿の転売先は不動産投資会社など。顧客からの問い合わせ件数は4月17日までに7492件に上る。顧客に対し、夜間に勧誘の電話がかかったり、1日に何度も電話がかかったりしたという。中には精神的苦痛を訴える顧客もいる。

 三菱UFJ証券は弁護士と協力して、名簿業者や転売先の業者に対して勧誘リストからの削除を求めたり、警告書を送付したりするなどして、名簿が利用されないように対策を講じている。しかし、「名簿業者が転売した14社のうち、まだ3社は使用停止に合意していない」と前田孝治常務取締役は説明する。

 情報を入手した可能性がある48社についても「当社が確認できた業者であり、まだ連絡が取れていない業者もある。入手経路までは把握できていない」(前田常務)といい、流出した名簿の利用を完全に停止するのは困難な状況となっている。

 秋草史幸取締役社長は「元社員がお客様の情報を漏洩させて、皆様にご迷惑をおかけしてご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」と陳謝した(写真)。同社は4月14日付で秋草社長を本部長とする「お客様情報流出対策本部」を設置。対策本部が今後、事実解明のための調査や顧客対応、再発防止策の策定などにあたる。