写真1●NTT-MEの堺紀雄取締役ネットワークソリューション事業部長
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患者の経過を一覧表示する「タイムライン機能」
患者の経過を一覧表示する「タイムライン機能」
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 NTT-MEは2009年4月15日、診療所向けSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型電子カルテサービスを発表した。4月20日から順次提供を始める。データセンターに電子カルテのアプリケーションを置き、診療所のクライアントパソコンからNGNを利用してアクセスする。診療所が安価かつ安全な形で電子カルテシステムを実現可能にするのが狙いだ。

 同社が提供するサービスは「Future Clinic 21 ワープ」。NTT東日本、西日本が提供するNGNの「フレッツ光ネクスト」を利用する。「NGNを利用すると、診療所とデータセンター間を閉じたネットワークでつなぐことができる。信頼性の高さが売りものだ」と、NTT-MEの堺紀雄取締役ネットワークソリューション事業部長は説明する(写真1)。インターネットの「Bフレッツ」を選ぶことも可能だ。4月20日にNTT東日本のフレッツ光提供エリアで提供開始。6月以降にNTT西日本の提供エリアでも提供を始める。

 Future Clinic 21 ワープは、患者の病状や検査値、処方薬などの経過を年/月/日単位で一覧表示する「タイムライン機能」を備えるのが特徴だ(写真2)。入力はキーボード、マウスのほかペンタブレットでも可能。ペンタブレットをカルテ上の用語に重ねるとポップアップで追加情報を表示する。今後この機能を利用した専門性の高いコンテンツなどを登録する予定という。

 SaaSとして提供するので、アプリケーションを制度改定などに対応させる手間が省ける。医師が入力した診療記録は、データセンターとバックアップ用データセンターに加え、診療所に置いたストレージにも保存する。

 災害などでデータセンターに接続できない場合でも、診療所のストレージから直前までの診療記録を参照できる。診療記録は5年間以上の保存が医師法で義務付けられているが、現時点では無期限で保存する予定だという。

 月額利用料は最小構成で7万8750円。50Gバイトの診療記録保存用ディスク、サポートなどを含む。このほかに契約料が1050円、初期工事費は13万5450円から(いずれも税込み)。ほかにNTT東日本、西日本とフレッツ光ネクストまたはBフレッツの契約が必要になる。

 「SaaSにより初期費用を抑えられる。通常は電子カルテを導入する際に診療所にサーバーを設置するので、別途スペースの確保や空調の整備が必要だった。こうした問題からも解放される」(堺氏)。2、3年以内に全国に約10万施設ある診療所のうち1000施設での利用を目指す。

■変更履歴
記事公開時の末尾の1段落に事実誤認がありました。「(医療情報システムの安全管理に関するガイドライン)第4版では病院や診療所における診療記録の保存について、経済産業省や総務省が定めるガイドラインに準拠した上で医療機関外でも認める方針を初めて示した」とありましたが、第4版はガイドラインであり、外部保存のできる機関の範囲は2005年に発出した「「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正について」の通りで変更はありません。
 また、「これまで病院や診療所の診療記録は、災害時のバックアップ目的以外で医療機関外で保存することができなかった」とありましたが、従来からバックアップ目的以外で診療記録を医療機関外に保存できるケースがありました。上記通知では、電気通信回線を通じて診療録の外部保存を行う場所として、行政機関が開設したデータセンターまたは医療機関等が震災対策等の危機管理上の目的で確保した安全な場所等としています。該当段落は削除しました。以上、お詫びして訂正します。[2009/4/16 22:20]