福岡市おけるユビキタス特区「地方ブロック向けマルチメディア放送」実験が本格化する。実験試験局免許が2009年3月31日付け交付された。現在は最大出力250Wで電波発射をし,6セグメント(3セグメント放送×2)のサービス実験を展開している。

 これを受けて,FM東京とJMデジタルメディアは共同で,3セグメントを利用するマルチメディア放送サービスの実験を本格化させる。FM東京は,エイベックス・マーケティングやよしもとファンダンゴ,ぐるなびらとともに,2011年7月以降に実用化が見込まれる「地方ブロック向けマルチメディア放送」のコンテンツを先取りするものとして,共同で開発していく。

 計画では,JMデジタルメディアは,携帯電話型受信端末200台をFM東京に提供する。FM東京は,その端末を地元ラジオ局「FM福岡」のリスナーの中から希望者に無償で提供し,この実験のモニターとして参加してもらう。

 FM東京が収集・蓄積したモニターの声,さらには利用実態調査やアンケートなどの各種実証データは,JMデジタルメディアが分析・活用する。「通信・放送融合時代にふさわしいユーザーにとって魅力的な「3セグメントマルチメディア放送サービス」構築に役立てていく」という。またこの実験で得られた結果などは「VHF-LOW帯マルチメディア放送推進協議会(VL-P)」と共有し,VHF-LOW帯での技術運用規定の策定に貢献していきたい考えである。

各社が福岡ユビキタス特区の場を使って実施する実験内容は以下の通り。
<エイベックス・マーケティング> 新・オンガク生活【mu-mo】
16:9のフル画像で楽しめる音楽番組を配信する。データ放送と連動して,同時に携帯電話による通信を使うことでマーケティング調査やCD・イベントチケットなどの物販ビジネスを先行開発する。

<ぐるなび>
放送波でIPコンテンツをそのまま配信することができる「IPデータキャスト」の技術を使って,既に携帯やパソコンのインターネット上で提供している店舗情報などのコンテンツを放送波でプッシュ配信する。基本的に全国一律情報の配信となる見込みのVHF帯ハイバンドを使った「全国向け放送」と異なり,地域密着した情報をニーズに合わせて配信することができることが,「地方ブロック向けマルチメディア放送」の長所としている。

<よしもとファンダンゴ>
コンテンツを放送波でダウンロード配信して携帯電話で課金できるインフラを利用して,吉本興業グループの携帯向けオリジナルコンテンツをプッシュ配信して,視聴者の購買動向について調査しノウハウを蓄積する。

 なおJMデジタルメディアは,2007年9月にジャパンエフエムネットワーク(JFNC)と三井物産が3セグメントマルチメディア放送でのビジネス展開を目指す新会社として設立した。2008年12月には,NECビッグローブとFM東京が資本参加した。「地方ブロック向けマルチメディア放送」のソフト事業において,新規参入企業が展開する新しいサービスとともに,全国の既存AM・FMラジオ局がそれらのサービスと連携し,新たな役割を担うことができるような事業スキームの確立を目指しているという。

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