シャープは2009年4月8日,経営戦略説明会を開催した。世界同時不況によって経営環境が悪化する中,同社の片山幹雄社長(写真1)は,「日本で製造した製品を(海外に)輸出するビジネスモデルでは,液晶パネルなど最先端の産業でも困難な状況になってきた。これまでの垂直統合型ビジネスを改めて,消費地で生産を展開し販売する“地産地消”体制に抜本的に変える」と説明した。
具体的には,同社が海外展開する際には,現地の有力企業とジョイント・ベンチャーを立ち上げる。シャープは出資金とともに生産技術やノウハウを提供し,その対価を初期費用としてジョイント・ベンチャーから受け取るスキームを取る(写真2)。出資金とほぼ同額の対価が得られれば,シャープの初期投資負担は実質ゼロにできる。いわば生産技術そのものを輸出してビジネス化する形だ。「シャープの一番の強みは生産技術。これまで日本は人件費や為替などで海外と比べるとハンディキャップがあった。それを生産技術の高さでカバーしていたが,それも限界にきた。同じ土俵で戦えば勝てる」(片山社長)。
新しいビジネスモデルへの転換は,相手先との意思決定のすりあわせなど,これまで直面しなかったような課題が表面化する可能性もある。この点について,片山社長は「自社だけで進めれば楽だが,それが今のような経営状態を引き起こした。自動車産業などは既に同じ形を展開している。だからシャープ自身が変わらなければならない」と決意を示した。
同時に,2008年度の業績予想の下方修正も発表した。売上高予想は,2009年2月に発表した2兆9000億円から500億円減となる2兆8500億円に,営業損失予想は同300億円の赤字が拡大し600億円の赤字に,それぞれ下方修正した。液晶の流通在庫の調整や,上記の事業構造改革のために追加費用を計上した影響を反映させた。片山社長は「2008年度下期の状態が続いても収益を確保できる体制にした。2009年度の早期黒字化を目指す」と語った。
個別の事業説明の中で携帯電話事業については,「国内市場は予想以上に市場が小さくなってしまった。2009年度も期待はできない。通信事業者と密接な関係を維持してシェア拡大を目指す」(片山社長)と説明した。海外市場は「中国市場においてマーケティングが順調に進み,大きな市場の伸びを期待している。中高級機を中心に製品を投入してきたが,春からは普及価格帯の機種も新たに投入する」(同)。欧米ではスマートフォンのニーズが高まっており,既に展開している米国市場に加えて,2010年には欧州でも事業を展開する計画という。