わずか4カ月でIT予算を3割削減する企業の割合が6%から22%に拡大---。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が4月7日に発表した「企業IT動向調査2009」で,システム投資を絞り始めた企業の実態が明らかになった。IT予算の動向は,2007年度に予算額のピークを迎え,減少傾向にある。今回の調査から,その傾向が著しく加速する見込みであることがうかがえる。

 この調査はJUASが毎年秋に行っている。今回は,2008年11月の通常調査後に起きた景気の急激な悪化を受け,それ以後のユーザー企業のIT予算実態を正確に把握するため2009年3月に追加調査を行った。

 通常調査の時点では,2009年度のIT予算を「増加」させると回答した企業の数から「減少」させるとした企業の数を引いたDI値の予測値は「0」であった。しかし,追加調査ではDI値は初めて「0」を大きく割り込み,「▲35」となった()。

図●IT予算の動向
図●IT予算の動向

 特に落ち込みが著しいのが大企業である。売上高「1000億円以上」の企業では,追加調査の時点で「減少」が6割を超えている。業界別に見ると,輸出関連企業が多い製造業のDI値低下が目立つ。素材製造は,11月時点では「3」だったDI値が3月時点では「▲58」に,機械製造では,同じく「▲22」から「▲80」にDI値が低下した。これは「海外展開するグローバル企業ほど,ブレーキを早く踏んだ」(JUAS)ためと考えられる。

 IT予算の削減幅も拡大している。IT予算額を「10%以上減少」させると回答した企業は18%から47%と29ポイント増加している。,そのうち「30%以上減少」させるとした回答の割合も6%から22%と大幅に増加した。2008年11月のインタビューや追加調査時の自由記述から,予測できない景気動向の中で新規事業を凍結したり,スタートしているプロジェクトを見直したりするなどしてコスト削減に取り組む企業の様子が垣間見える。

 このような状況の中で,ユーザー企業はIT投資評価を重視するようになっている。事前評価を実施している企業の割合は前年度調査の65%から75%に拡大,事後評価を実施している企業の割合も55%から70%へと大幅に増加している。特に,売上高1000億円以上の企業では9割以上が事前評価を実施している。

 調査からは,IT投資評価の効果も見て取れる。事前評価を実施している企業はしていない企業に比べ500人月以上のプロジェクトにおける満足度が高いという結果が示された。さらに,事後評価まで実施する企業では,品質の満足度が30ポイント向上し,工期・予算も「予定通り」と回答する割合が10~20ポイント向上している。