写真1●テレビ向けサービスを説明するヤフーの井上雅博代表取締役社長(左)と,坂東浩之R&D統括 プラットフォーム開発本部 EW開発部長(右)
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写真2●テレビ向けサービスのトップ画面。シンプルなレイアウトで高速に表示できるよう工夫している
写真2●テレビ向けサービスのトップ画面。シンプルなレイアウトで高速に表示できるよう工夫している
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写真3●4月下旬に提供予定の画像検索のデモンストレーション。検索結果をスライドショー表示して楽しめる
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 ヤフーは2009年4月6日,インターネット接続機能を持つテレビ向けに,「テレビ版Yahoo! JAPAN」の提供を同日より開始すると発表した。

 テレビ版Yahoo! JAPANはデジタルテレビ情報化研究会のネットTVガイドラインに準拠したサービスで,国内主要テレビメーカーのインターネット対応テレビに標準搭載されているWebブラウザーで利用できるという。今回はYahoo! JAPANのトップページと検索に関連するサービスを,大画面のテレビ専用にデザインした画面で提供する。今後パソコン向けのYahoo! JAPANで提供しているそのほかのサービスについても,順次対応してく予定である。

 テレビ版Yahoo! JAPANのメニューは,文字入力をしづらいテレビでも利用しやすいよう,情報をたどって操作することに重点を置いて作られている。具体的には,Yahoo!検索ランキングの急上昇キーワードランキングや,検索総数ランキングなどから気になったキーワードをクリックすることでそのキーワードに関する検索結果が表示されるなど,テレビに付属しているリモコンを使って,テレビ番組を見るような簡単な操作で利用できるという。また,文字入力パッドを使って,好きなキーワードで検索することも可能である。

 リビングルームなど,家族で利用することを想定しているため,初期設定で「アダルトフィルタ」機能を適用している。また,テレビメーカーとの協力で,有害サイトフィルタリングサービス「Yahoo!あんしんねっと」への対応も今後検討する。

 発表会で行われた記者との質疑応答は,以下の通りである。なお回答したのはヤフー 代表取締役社長の井上雅博氏と,ヤフー R&D統括 プラットフォーム開発本部 EW開発部長の坂東浩之氏である。

――Yahoo!動画のテレビ版など,動画配信関連のサービス予定はあるか。
坂東氏 2008年10月に開催した展示会「CEATEC JAPAN 2008」で,インターネット対応テレビ向けのYahoo!動画サービスのデモンストレーションを,シャープ,東芝,日立製作所と協力して行った。いずれはサービス提供したいと考えている。

――テレビ向けサービスの利用はどれくらいを見込んでいるか。
坂東氏 インターネット対応テレビはこれまでに約1000万台出荷済みで,2009年度は約600万台が出荷されると想定している。この約1600万台の対応テレビのうち,実際にインターネットに接続されるのが2割程度と見積もっている。そこから今年度は,300万ののべ利用者にサービスを使ってもらえればいいと考えている。
井上氏 今年度はサービス開始の年で,利用者もテレビを使ったインターネットの利用に慣れていない。本格的な利用が始まるまでしばらくかかる。2011年のアナログ放送の終了に向けたテレビの買い替えが進んだその先に,国内にある1億台のテレビのうち半分でインターネットを使ってもらえるように,魅力的なサービスを拡充したい。

――無料サービスのほかに,広告モデルは考えているか。テレビ向けの事業が収益に貢献するのはいつごろになりそうか。
井上氏 当面広告モデルが多くなる。ただし視聴者が少ないサービスの広告は売れないので,数年は投資時期と考えて取り組む。今後2~3年は収益を期待しておらず,まずは利用を広めることに注力する。利用者が100万人単位になれば,自然と広告媒体としての価値が上がってくる。

――米Intelと米Yahoo!が共同で取り組むテレビ向けWidgetと,今回のサービスとの関係は。
井上氏 我々は装置メーカーではないので,なるべく普及している機器にサービスを提供するのが重要となる。米Intelと米Yahoo!の取り組みはサービスの手前の技術の部分を,装置メーカーに対して採用を働きかけているものだ。日本はメーカーのインターネットへの取り組みが進んでいて標準規格もある。今回我々は,まずその規格の中で何ができるかを検討した。我々も米国でやっているサービスについては研究しており,実際に搭載されればいいと思っているが,それはもう1ステップ先の話になるだろう。
坂東氏 テレビをインターネットにつなげて活用する方法は,複数あると考えている。米国での取り組みは放送番組とインターネットアプリケーションのWidgetを同一画面に表示して使う方法を提案している。今後はさらに異なる活用方法がいくつも出てくるのではないか。

――課金機能を持たせてショッピングやオークションなど,イーコマース系のサービスを提供する予定はあるか。
井上氏 イーコマース系のサービスは,商品を家族みんなで一緒に選ぶという使い方が想定できる。順番にはなるが積極的に取り組みたい。

――シャープの「Yahoo!JAPAN for AQUOS」やソニーのアプリキャスト向けに提供している専用アプリなど,メーカー独自のインターネット機能にもサービスを提供している。どうやってサービスをすみ分けするのか。
井上氏 テレビ向けのインターネットサービスは,まだきちんと統一されていない状況にある。メーカーが他社との差異化のために独自提供するサービスと,メーカーを問わず利用できる共通サービスがあり,どれかに一本化するのは時期尚早だ。メーカーが取り組むサービスでは,そのサービスが持つ特長を生かした先鋭的なサービスに取り組み,共通サービスではなるべく多くの人に便利に使ってもらえるサービスの実現に取り組む。この両方をバランスよく追い求めていく。

――「Yahoo!あんしんねっと」をAPI化してフィルタリングサービスとして提供する狙いは。
坂東氏 青少年ネット規制法の施行に合わせて,Webサイトにアクセスできるテレビでも子供に有害情報を見せないためのフィルタリングの仕組みを提供しようと,家電メーカー各社が取り組んでいる。ヤフーは1997年から有害情報のフィルタリングに取り組んできた経緯があり,社会貢献の一環としてAPI化してメーカーに提供してはと考えた。ユーザーが無料で利用できる形で提供する予定である。

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