写真1●情報化研究会主宰のNEC 企業ネットワークソリューション事業本部 技術主幹 松田次博氏
写真1●情報化研究会主宰のNEC 企業ネットワークソリューション事業本部 技術主幹 松田次博氏
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 「これからはフランス料理屋にならないともうからない。従来のカレー屋やラーメン屋などの専業店ではダメだ」。

 情報通信業界の私的勉強会である「情報化研究会」は2009年4月4日,発足25周年を記念した第10回京都研究会「進化を続けるネットワークとITの未来」を開催。同研究会の主宰であるNEC 企業ネットワークソリューション事業本部 技術主幹の松田次博氏写真1)は「これからの企業ネットワークとネットワーク人に求められるもの」というテーマで講演し,ネットワーク・ソリューションを提供する際の心構えとして,冒頭のように述べた。

 松田氏の言うカレー屋やラーメン屋とは,広域イーサネット・サービスやIP電話などだけを提案・提供するベンダーやインテグレータを意味する。これに対してフランス料理屋は,さまざまなネットワーク・サービスを“食材”に,おいしく“料理”して提供するベンダー/インテグレータを指す。「NTT東西のNGN(次世代ネットワーク)やKDDIの『KDDI Wide Area Virtual Switch』,イー・モバイルやNTTドコモのモバイル・サービスなど,使えるサービスのバリエーションが増えている。これらをうまく組み合わせて,ユーザー企業に最適なソリューションをオーダーメード型で提供していかなければならない」(松田氏)。

 松田氏がこうした心構えを説く背景には,「多様化・複雑化するネットワーク・サービス」があるという。例えば,「NGN上のサービスにも『フレッツ・VPNワイド』『フレッツ・VPNゲート』『BusinessEther ワイド』など,さまざまなものがあり,東日本と西日本を接続できないものや,東西接続ができても高い料金を支払わなければならないものがあったりと複雑」(松田氏)。3月末日まで松田氏がNTTデータに在籍していたこともあり,NTT関係者が数多く詰めかけた会場に向かって「(複雑で分かりにくくしてくれて)NTTさんありがとう」という冗談を飛ばしながらも,「ネット屋の活躍する場がどんどん増えている」と,通信事業者やシステム・インテグレータの多い聴衆に対して奮起を促した。

 また,組み合わせるサービスとして有力なものとして松田氏は,ワイヤレス・ブロードバンドと海外のデータ・センターを挙げた。あるユーザー企業のネットワーク構築で松田氏は,主にバックアップ用のWAN回線としてイー・モバイルの3Gデータ通信サービスを全面的に採用したという。「電波状況の良い場所に導入したものは,24時間365日つなぎっぱなしにしていても稼働率は99%を超えた」。

 ところが,同じユーザーのデータ・センター構築に関しては,松田氏はコンペで敗れてしまったという。「なぜ負けたのかをユーザーに聞いてみると価格だという。安価なのは,米国にあるデータ・センターを使うからと言われて非常に驚いた。そこで国内にしか拠点のない企業でも海外データ・センターはアリなのだと気づかされた」。これをきっかけに松田氏は「グローバル・プロキュアメント」(世界調達)のコンセプトを掲げ始め,今後のネットワーク提案で実践していく意向を示した。