独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は2009年4月中旬にも,同機構が配布しているIPAフォントを,改変と再配布が自由な新ライセンスで新たに配布する。現在は改変を認めていないライセンスのもとで配布しており,IPAフォントを改良したフォントの配布が困難,Linuxディストリビューションによっては同梱が困難という問題があった。

 以前,Linuxには高品位でフリーなフォントがないという問題があった。IPAはこの問題に対し,Linuxのデスクトップでの利用を促進するため,商用フォントを買い取り,2003年末にIPAフォントとして無償公開した。当初,IPAが支援したソフトウエアと同梱する形でのみ再配布を認めていたが,2007年に現行ライセンスとなり,IPAフォント単体での再配布ができるようにした。

 IPAフォントの新ライセンスは,Open Source Initiative(OSI)により,2009年4月3日,オープンソース・ライセンスとして認定された(OSIの該当ページ)。Debian GNU/Linuxのように,フリーなライセンス以外のプロダクトを含ないポリシーを持つディストリビューションでは,IPAフォントを採用することは難しかった。OSIに認定されたことで,純粋にフリーなディストリビューションでの採用が広がるなど,適用範囲が広がる可能性がある。

 IPAフォントを改良した主要なフォントとしては,IPAモナー・フォントがある。IPAモナー・フォントは,IPAフォントの文字幅をMSゴシックやMS明朝に合わせることで,2ちゃんねるのアスキー・アートやWord文書などをレイアウト崩れなく見ることができるようにしたフォントとして人気があった。IPAのソフトウエアと同梱する形でのみ再配布できる当初のライセンスでは改変が可能だったため,IPAモナー・フォントはこの初期ライセンスに基づき作成された。

 しかし,IPAフォントの現在のエンドユーザー向けライセンスが改変を認めていないことから,IPAモナー・フォントをディストリビューションの標準フォントとして配布することは難しかった。IPAモナー・フォントは当初Ubuntu日本語版の標準フォントとして配布されていたが,最新バージョンであるUbuntu 8.10では標準フォントではなく,選択してインストールする形になっている。

 改変が自由になることで,IPAモナー・フォントなどの派生フォントをディストリビューションの標準フォントとして採用することも容易になる。

【追記】
掲載時,記事からリンクしていたOSIサイト上のライセンスが,OSIに認定される前の古いライセンス案となっていた。古いライセンス案では「改変物を再配布するには差分ファイルの形式でなければならず,IPAフォントを改変したものをそのまま配布してはいけない」という制限があったが,認定された新しいライセンスでは,一定の条件のもと改変したフォントそのものの配布が許可されている。[2009/04/10 17:49]

◎関連リンク
一般利用者向けIPAフォントのダウンロード || OSS iPedia(IPA)