米AT&Tは2009年4月1日(米国時間),携帯電話機やスマートフォンに適用しているのと同じ奨励金付きの価格体系を,消費者向けネットブックへ試験的に適用すると発表した。このマーケティング手法は,パソコン市場を席巻するかもしれない。同社は,月額40~60ドルの通信プランを2年間利用することを条件に,本来なら300~600ドルのネットブックを50ドル程度で販売する。

 AT&T最高マーケティング責任者(CMO)のDavid Christopher氏は,「ブロードバンド接続サービスは通信速度の速さだけでなく,モバイル性が求められるようになった。ユーザーには,家庭と外出先の両方でインターネットにアクセスしてもらいたい。当社の家庭/Wi-Fi(無線LAN)/モバイルに向けたブロードバンド・サービスを利用すれば,場所や時間にほとんど縛られることなく小型ノート・パソコンの能力を最大限引き出せる」としている。

 この「Mini Laptop」キャンペーンを現在はジョージア州アトランタとペンシルベニア州フィラデルフィアに限って実施中だが,好評ならすぐにほかの主要都市でも開始する方向という。評論家はキャンペーン成功を予想しており,ネットブック自体の販売が好調なこともあって,奨励金付きネットブックという販売モデルはパソコン市場の力関係や経済を永久に変えてしまう可能性がある(関連記事:2009年の世界ネットブック出荷台数は66%増の2700万台超へ,景気低迷が追い風に)。以前からパソコンの値段は確実に下がり続けているが,この2年間で突如ブーム化したネットブックは価格下落ペースを急加速させた。

 AT&Tから50ドルで買えるのは,8.9インチ画面のネットブック「Acer Aspire One」だ。標準的なハードウエア・スペックの製品であり,プロセッサは動作周波数1.6GHzの「Atom」,メモリー・サイズは1Gバイト,ハードディスク容量は160Gバイトとなる。ただし,落とし穴が存在する。この安い値段で手に入れるには,家庭向けDSLサービスの付いた月額60ドルの通信プランをAT&Tと契約しなければならない。モバイル・データ通信量に上限のあるもう少し安いプランを選ぶと,ネットブックの価格は100ドルに上がる。

 AT&Tは「Dell Mini 9」(画面サイズは8.9インチ)や「Dell Mini 12」(同12インチ),「LG x110」(同10インチ),「Lenovo x200」(同12.1)も用意している。価格はまちまちで,最も高いLenovo x200が750ドルとなる(もっともx200はネットブックと呼べず,ほかの機種に比べはるかに性能が高く,機能も豊富だ)。x200以外の機種は100~250ドルである。

 報奨金付きネットブックを一般販売する企業は,AT&Tが初めてではない。だが,米国の大手携帯電話キャリアとしては初の取り組みだ。例えば,家電量販チェーンの米Radio Shackは2年間の無線通信プラン付きAspire Oneを100ドルで販売したことがある。

 Mini Laptopキャンペーンの詳細については,AT&TのWebサイトで確認してほしい。