写真●中国Evermore Softwareの曹参CEO
写真●中国Evermore Softwareの曹参CEO
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オフィスソフトといえばマイクロソフトの「Microsoft Office(MS Office)」が圧倒的シェアを誇る。しかし昨今、MS Officeと互換性を持つ低価格オフィスソフトが中国を中心に市場に登場。中国では国産ソフトの普及を目的に、政府での導入が進んでいる。果たして中国産オフィスソフトはどこまでシェアを広げられるのか。低価格オフィスソフト「EIOffice」開発元であるEvermore Softwareの曹参CEO(最高経営責任者)に聞いた。

中国でのパソコンの普及率、利用状況はどれほどか。市場の特徴は何か。

 2、3年前の時点で1億人以上のパソコン所有者がいたと聞いている。インターネットの利用人口はもっと多い。自分でパソコンを持っていなくてもネットカフェなどで利用することがあるからだ。インターネットの利用人口はパソコンの利用者の少なくとも2倍、2億人を超えている。

 中国における深刻な問題として、海賊版ソフトウエアの氾濫がある。中国のソフト市場は、全体のおおよそ半分を海賊版ソフトが占めている。政府もこれを重く見ており、正規ソフトウエアの普及・発展を重要な課題の一つに掲げている。

企業では日本同様、パソコンを利用した書類などのやり取りが一般化しているのか。

 その点は日本と同じと考えていい。企業間の情報のやり取りはメールにファイルを添付して行うことが多い。行政と企業の間でも、同様の方法で情報をやり取りしている。

中国の企業でのオフィスソフトのシェアはどうなっているか。

 正確な数値を持っているわけではないが、中国でもやはりマイクロソフトのMS Officeのシェアが一番高い。しかし「EIOffice」や「KINGSOFT」のような中国産ソフトは確実に存在感を増している。

 その理由は政府にある。中国政府の中で最近、中国産のオフィスソフトを採用する傾向が広がってきている。企業から政府に提出する納税申請や会議の出席希望などの書類は「.doc形式」のようにファイル形式を指定しており、必ずMS Officeを使わなければいけないということはない。

Evermoreが提供するEIOfficeのシェアはどうか。

 中国政府は国産ソフト普及を拡大する考えを明らかにしており、2013年までに国産オフィスソフトのシェアを市場の50%という目標を立てた。国産オフィスソフトのシェアなのでEIOfficeだけの数値ではないが、13年までにマイクロソフトのシェアを超えてみせる。

 昨年12月には中国政府組織である国務院の国家統計局に所属する約90機関でEIOfficeの導入を決めた。目的は中国経済の調査だ。金額は約1億5000万円程度だ。ここで採用したソフトはやがてすべての政府機関に広がると言われている。

それだけでマイクロソフトを超えられるのか。具体的な戦略はあるのか。

 現在はソフト1本当たりの収益よりもシェア拡大を狙うためにEIOfficeの価格を抑えている。例えば米国では、アップグレード権なしにワードプロセッサ(文書作成ソフト)、スプレッドシート(表計算ソフト)、プレゼンテーション(プレゼンテーションソフト)のセットを49米ドルで提供している。アップグレード権を付けると年間99米ドルだが、それでも価格の面では勝負できる。

 2月に発売開始したEIOffice2009では、MS Office2007形式のファイルの読み込みが可能になった。さらにEIOfficeはMS Officeと互換性を持ちながら、独自機能も用意している。文書作成、表計算、プレゼンテーションの個々の作業を一つの画面で表示する「インテグレーション」機能は好評を得ている。まずは価格で入り口を広げ、その後はMS Officeとの互換性に加えた独自機能でアピールしたい。

独自機能のほかに特徴はないのか。

 EIOfficeはJavaでコーディングして開発した。つまりOSがLinuxであっても問題なく利用できる。OSに左右されず利用できることは、大きな強みだ。

 LinuxでMS Officeをそのまま利用することは難しい。今後海賊版ソフトの取り締まりが強化されればWindowsと比べてLinuxの利用者は増えるのではないかと考える。これはEIOfficeにとっての追い風になるだろう。