アビームコンサルティングは2009年3月25日、日本版SOX法(J-SOX)対応を進める顧客向けに「18号報告書」を提供すると発表した。対象は、独SAP製パッケージソフトを用いて構築したシステムの運用保守を請け負っている「AMO/ITOサービス」。同サービスの利用企業は18号報告書を受領することでJ-SOX対応の負荷を軽減できる。

 18号報告書は、内部統制の整備・運用状況を監査法人が監査し作成する報告書の通称だ。日本公認会計士協会の監査基準委員会報告書第18号「委託業務に係る内部統制の有効性の評価」に基づいた報告書であることから、「18号報告書」と呼ばれている。J-SOXの適用企業がJ-SOX対応の対象となるプロセスを外部委託している場合、委託先の内部統制の運用状況を自ら評価しなければならない。18号報告書を委託先から受領することにより監査の手間が省けるため、委託元のJ-SOX対応の負担が軽くなる。

 アビームは今回、SAPシステムの運用手順を標準化することで、複数の顧客に同一の18号報告書を提供できる体制を整えた。AMO/ITOサービスを担当する部署の業務プロセスを標準化したうえで、1人の担当者が実施する業務の範囲を明確化。さらにITガバナンスのフレームワーク「COBIT」などを参考に、内部統制を整備した。AMO事業部の西村暁マネージャーは「顧客ごとに運用を請け負うシステムの範囲は異なるが、みなSAPを利用していることから運用手順を標準化しやすかった」と説明する。18号報告書の監査を担当したのは新日本監査法人である。

 ただし、AMO/ITOサービスを契約するすべての企業が対象というわけではない。アビームの標準的な運用プロセスに則った運用を実施する「ゴールドサービス」の利用企業にのみ、18号報告書を提供する。「アクセス管理の設定を委託してもらったり、システムの変更の承認などで文書のやりとりが発生する」(西村マネージャー)ため、こうした作業を業務プロセスに折り込んでいるゴールドサービスのみとした。

 18号報告書の提供は4月1日から。事前申告が必要で、提供価格は「顧客と相談しながら決めていく」(西村マネージャー)。J-SOX対応2年目以降となる今後は、内部統制の運用状況の評価期間中に申し出た顧客に対して18号報告書を提供する。アビームはゴールドサービスの利用企業数や18号報告書の受領を希望した企業数を明かしていない。西村マネージャーは、「当社にSAPシステムの運用をアウトソーシングする場合、J-SOX対応の対象となる会計システムが含まれる場合がほとんど。需要は2年目以降も増えるのではないか」とみる。