図1●GPSと同軸ケーブルを組み合わせた従来構成
図1●GPSと同軸ケーブルを組み合わせた従来構成
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図2●今回開発したEPONシステムを使う構成
図2●今回開発したEPONシステムを使う構成
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 KDDI研究所,古河電気工業(古河電工),米テクノバスの3社は2009年3月17日,高精度な時刻情報を配信できるEPON(Ethernet passive optical network)システムを開発したと発表した。この技術によって,ブロードバンド無線アクセスのバックホール回線の建設コストを大幅に低減できるという。

 WiMAXなどのブロードバンド無線アクセスでは,基地局間の電波干渉を防ぐために,無線信号の送信タイミングなどを高い精度で一致させる必要がある。このため,現在のシステムでは,GPS衛星から受信した基準時刻を基に,各基地局の時刻を同期している(図1)。このため,GPS信号の受信設備や,地下や屋内に信号を配布するための同軸ケーブルなどのコストが高くついていた。

 今回のシステムは,GPSから受信した協定世界時(UTC)の時刻情報を,分岐した光ファイバを使うイーサネット伝送方式「EPON」を利用して,各基地局に配布する(図2)。これにより,基地局ごとにGPS受信装置を用意したり,同軸ケーブルを敷設したりする必要がなくなり,コストを抑えられる。日本国内でFTTHが主流のブロードバンド・アクセスとして普及していることから,EPONで使う装置の価格や敷設コストはかなり下がっているという。屋内エリア構築の場合,従来方式に比べて今回のシステムは2分の1以下のコストで済むとしている。なお,今回のシステムは,WiMAXのほか,同様にGPSを利用するcdma2000のシステム構築も低コストにできるとしている。

 今回開発したシステムは,IEEE(米国電気電子学会)の標準仕様である最大伝送速度1Gビット/秒のGE-PONをサポートし,さらにテクノバス独自の最大伝送速度2Gビット/秒の仕様も備える。2個のPONポートを持ち,1ポート当たり最大64台の基地局を収容できるという。最大伝送距離は20kmで,伝送距離の長さにかかわらずプラスマイナス0.5マイクロ秒以下の精度で信号を配布できる。この精度は,ブロードバンド無線アクセスのバックホールに十分な精度だという。

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