写真1 日立の10G-EPON試作システム。手前が映像配信サーバー,奥の2台が受信側のテレビ
写真1 日立の10G-EPON試作システム。手前が映像配信サーバー,奥の2台が受信側のテレビ
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写真2 光回線終端装置(OLT)側の試作ボード
写真2 光回線終端装置(OLT)側の試作ボード
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写真3 光回線端末装置(ONU)側の試作ボード
写真3 光回線端末装置(ONU)側の試作ボード
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 日立製作所は2009年3月17日,伝送レートが10Gビット/秒(10Gbps)の光アクセス・ネットワーク(10G-EPON)を利用した映像通信システムを開発,報道機関向けに披露した(写真1~3)。

 公開したデモでは,映像配信サーバーから2台の受信端末(テレビ)に対して,2つのHD映像を同時に流してみせた。実演はなかったものの,テレビ側からサーバー側への上り信号についても10Gビット/秒の伝送が可能という。

 PON(passive optical network)は1本の光ファイバを複数の加入者が共有するシステムであり,双方向通信が可能な10G-EPONについては2009年2月に三菱電機が試作システムを公開していた(関連記事)。三菱電機との違いに関して日立は,「報道で知る限り」と前置きした上で,信号の送受信を確かめただけでなく,映像配信システムとして動かすところまで作り込んだことだと説明した。

 今回の開発のポイントとして,日立では「誤り訂正処理機能を搭載するLSI」,「高感度かつ広ダイナミックレンジの受信技術」の2点を挙げている。誤り訂正処理は,IEEE802.3avが定めるRS(255,223)をいち早く実装した。受信感度については-25dBm(誤り率10-12),ダイナミックレンジ20dBを達成した。特に,上り信号については,局舎からの距離や通信環境に応じて上り信号が弱くなることがあり,高い受信感度と広いダイナミックレンジを確保する必要がある。

 今後は,回路集積による省電力化など実用化のための取り組みに移る。実用化時期は「3~5年の間」とする。

 今回の開発成果の一部は,情報通信研究機構(NICT)から,慶應義塾大学と共同で受託した「集積化アクティブ光アクセスシステム」で得られたもの。詳細は,3月17日から愛媛県松山市で開催されている「電子情報通信学会総合大会」で発表する。