写真●左から日立製作所の現会長の庄山悦彦氏、新会長兼社長の川村隆氏、現社長の古川一夫氏(撮影:いずもと けい)
写真●左から日立製作所の現会長の庄山悦彦氏、新会長兼社長の川村隆氏、現社長の古川一夫氏(撮影:いずもと けい)
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 日立製作所の元副社長で、現在、日立プラントテクノロジーと日立マクセルの会長を兼ねる川村隆氏が、2009年4月1日付で日立製作所の代表執行役 執行役会長 兼 執行役社長に就任する。現社長の古川一夫氏は取締役 代表執行役 執行役副会長、現会長の庄山悦彦氏は取締役会議長へ退く(関連記事)――。

 今回の人事は約10日前に庄山氏から川村氏に伝えられ、3月16日の取締役会で正式決定したという。川村氏は緊張した面持ちで「全く予想していなかった。日立が直面する危機に対して先頭に立ち、役立つことができればとお受けした。これまで培ってきた顧客と人材を生かし、全身全霊で日立の再生に尽くしたい」と挨拶した。

 会見での一問一答は以下の通り。

川村新社長の方針を聞きたい。

川村氏:社会インフラやそのイノベーションに注力していく。情報システムや環境関連、電機システム、電池なども社会インフラに位置づけている。

 なかでも原子力などの電力事業が柱だ。原子力は社会にイノベーションをもたらすし、環境の面からも有用性が高まっている。

 環境分野は社会的に価値が高い分野と考えている。例えば、原子力以外にも、環境対応の鉄道や建設機械といったものが出てきている。

新体制について教えてほしい。

川村氏:平時であれば60%攻めて40%守る。今は40%攻めて60%守らなければならない。つまり次の攻めに備えるわけだ。2009年は大変厳しいが、構造改革に取り組み、次の攻めに打って出る体制を作り上げる。

 守備固めでは、副社長の人事でグループのベテランを集め、人数も5人に戻す。

古川氏:副会長として会長兼社長を支援していきたい。私自身は経済界や業界団体での業務にも力を入れる。

古川社長は退任を、いつどのようなきっかけで考えるようになったのか。

古川氏:2009年1月30日に08年度の(大幅下方修正の)見通しを出した。2009年が仕上げとなる3年間の構造改革に取り組む中、08年度にこのような厳しい結果となった。2月から3月にかけて09年度予算の見通しをしてきたが、なかなか改善しない。

 目いっぱいやってきたが、サブプライム問題の影響などで残念ながら成果を刈り取れなかった。マーケットや技術革新がものすごいスピードで動いている。(元々変化の激しい)電機はもちろん、電力の市場も例外ではない。従来のものさしでは測れなくなった。

 この状況を挽回するには強いリーダーシップが必要だと考え、庄山会長と相談し、最も強力な部隊を作ることにした。

「日立の社長は10年やる」と以前、庄山さんが言っていたが、この慣例と異なる。

庄山氏:10年とか決まっているわけではない。今は取締役の任期は1年。激動の時代には、その時々でベストな人材を登用しなければならない。ドッグイヤーで言えば3年の3倍で、古川社長はほぼ10年働いたと考えてもよいのではないか。

社長が日立本体からの昇格ではなく、グループ会社のトップを据えた。

庄山氏:グループ会社を下にみているような質問だが、そういう発想はない。イコールパートナーと考えている。適材適所で有効に人材を配置する、というのが基本的な発想だ。会長権社長としたのは、そのほうがやりやすいと考えたからである。

古川氏:これまで現会長にアドバイスをいただき、二人でやってきた。しかしこのような状況ではスピード感が重要だ。新社長には会長兼社長のメリットを出してもらいたい。

今後、国内外での人員削減はあるのか。

古川氏:今回、構造改革の一環として、自動車部品事業と薄型テレビなどコンシューマ事業の分社を実行すると発表した。以前、それぞれの事業で4000人の人員削減を発表したが、この方針は変えていない。今回の分社で雇用が失われることはない。

両社の分社化でどのような効果が出るのか。

古川氏:分社化することで迅速な意思決定、能動的な事業運営ができる。具体策はないが、他社とのアライアンスもできるようになる。かつて、分社化によって日立コミュニケーションテクノロジーや日立産機システムが活発化したという前例がある。

この2月3日に情報通信グループ長などの交代を含む新体制を発表した。そうした中で混乱はないのか。

古川氏:その時点では、2008年度の厳しい状況とともに、2009年度は回復するという見通しあった。しかしここにきて、2009年はさらに悪化するという状況が見えてきたので、さらに強力な体制を組むことにした。若干の混乱があるかもしれないが、納得してもらえると考えている。情報通信グループ長の交代人事を発表した時点では、今回の社長人事は考えていなかった。