アラクサラネットワークス CTOの林剛久氏
アラクサラネットワークス CTOの林剛久氏
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 「ネットワーク機器は常時電源オンが常識だが,蛍光灯やエアコンのように,ネットワーク機器も使わないときは電源オフにすれば省電力効果が得られる」---。2009年3月13日,「グリーンITフォーラム」に,ルーターやスイッチを開発,販売するアラクサラネットワークス CTOの林剛久氏(写真)が登壇。ネットワークの省エネ化を実現する同社の技術を紹介した。

 まず林氏は,2009年4月に予定されている省エネ法改正に言及。今回の改正により,省エネ法の対象となる特定機器に,ルーターやスイッチなどのネットワーク機器が加わることを説明した。特定機器の製造・輸入事業者は,消費電力の表示義務,省エネ性能の目標値を達成する義務を負う。

 経済産業省の発表によると,通信トラフィックの増加により,2025年のネットワーク機器の電力消費量は2006年の13倍に増加する。林氏は「法規制も決まり,今後はネットワーク機器の省エネ化が大きな課題になる」と考える。

 これまで,ルーターの転送性能あたりの電力効率は,LSIの微細化により,年率約30%で向上を続けてきた。しかし現在,「LSIの微細化によるリーク電流の増加で,改善率は鈍化してきている」(林氏)という。そこで同社は,今後発売する新製品に,アーキテクチャ・レベルでルーターを省エネ化する技術「集中アーキテクチャ」を採用していく方針だ。

 従来,同社の高性能ルーターやスイッチでは,処理エンジンを複数に分ける「分散アーキテクチャ」を採用していた。1つのパケットに対して,2つの分散処理エンジンがパケット処理を計2回実行する。これに対して,「集中アーキテクチャ」では処理エンジンが1つであるため,パケット処理回数が減り,消費電力が減少する。林氏は,集中アーキテクチャを採用した同社のルーター「AX6308シリーズ」と,従来の分散アーキテクチャを採用した「AX7808シリーズ」を比較すると,「消費電力を27%削減できた」と強調した。

 同社は,ネットワーク機器の省エネ化に加えて,ネットワーク全体の電力消費を削減するための技術開発にも取り組んでいる。林氏は「深夜や休日,企業のネットワークは一部しか必要ではない。不要な場所への給電や,未使用のネットワーク機器の電源をオフにすれば省電力効果が得られる」と指摘する。この考えを実現するのが,同社の「ダイナミック省電力システム」だ。

 ダイナミック省電力システムは,待機中や未使用のスイッチを省電力モードへ切り替えたり,自動的に給電を停止したりする機能を持つ。また,これらの省電力機能をスケジュール化して,休日や夜間の運用を自動化することができる。

 林氏は,「将来的に,通信トラフィックの変動に合わせてルーターの処理能力や回線速度を変動させる機能をダイナミック省電力システムに組み込みたい」と語る。そのために,変動をリアルタイムで予測し,ルーターの処理能力や回線速度にフィードバックする技術や,パケットを落とさない制御の弾力性を高める技術の開発を進めているという。