東京都環境局環境政策部の棚田和也環境政策担当課長は2009年3月13日,都内で開催された「グリーンITフォーラム」の基調講演で,東京都が気候変動対策のための新しい枠組みとして2009年4月から改正施行する「東京都環境確保条例」の内容と,企業に求められる対応を解説した。
同条例は,大規模事業所などに2010年度からCO2削減を義務づけるもの。現在,付帯する規則やガイドラインなどの策定作業中である。「自主的な取り組みを継続してきたが,削減効果は十分でない。取り組む企業と取り組まない企業との不公平も解消したい」と棚田氏は義務化の狙いを説明。また義務化により「現場だけの問題でなく経営の問題として取り組む企業が増えるだろう。削減コストを経費として明確に位置付けられるようにもなる」という。
削減を義務付ける対象は,「前年度の燃料,熱,電気の使用量が原油換算で1500キロリットル以上の事業所」(同)である。熱,電気をCO2に換算するための「排出係数」は,電力供給事業者の種類によらず一律とし,算定期間中はその値を固定するというルールを設けた。「原子力発電所の操業停止」というような突発事態による影響を受けないようにするためである。
ただし,1500キロリットルを超えた翌年からすぐに削減義務が生じるわけではない。まずは「指定地球温暖化対策事業所」として,削減計画書の作成や,組織体制の整備を義務づけられる。3年間連続して1500キロリットルを超えて初めて,その翌年から削減義務が発生する。
削減すべきCO2の量「削減義務量」は,「基準排出量」に「削減義務率」を掛け合わせた量になる。基準排出量とは,2002年度から2007年度の中で,任意の連続する3年を事業者が選び,その平均値として求めることができる。「任意の3年間を選べるようにしたのは,既に削減に取り組んでいる事業者の努力を尊重するため」(棚田氏)という。
基準排出量をいったん決めた後でも,相当の理由があれば変更できる。「設備の増築や用途変更(事務所からデータセンターにした,など)があった場合,排出量への影響が10%を超える場合に基準排出量を変更できる」(棚田氏)。
削減義務率は,対象となる事業所の区分により異なるが,8%もしくは6%である。これは,東京都における大規模事業所の比率や,これまでの取り組みによる削減実績などから試算して決めた。「2010~2014年度の第1計画期間で約10%を削減できるように削減義務率を設定した」。
「2020年までに削減すべき300万トン中,50万トンは既に削減できた。残る250万トンの削減は,現在利用可能な技術だけで達成できると見ている」(同)。例えば空調や熱関連の設備を,より効率のよいものに替えていくだけでも,6割強が削減できるという。
削減量が足りない事業所に対する罰則としては,不足分の最大3割の削減を知事から命令される。さらに,罰金や公表,あるいは不足分の排出権を都が買って事業所に料金を請求する,といった措置がありうるという。
今年度は規則やガイドラインの制定,義務率の決定といった作業を進め,来年度初めに説明会を開催する。夏頃には,各事業所の基準排出量を算定し確定する手続きが始まる。そして2010年4月から,削減義務が実際に課せられるようになる。棚田課長は「先駆的な取り組みを全国,そして世界に発信していき,東京を今後も環境先進都市にしていきたい」と抱負を語り,講演を終えた。