写真1●携帯電話の接続料の算定方法
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写真2●携帯各社の接続料の推移
写真2●携帯各社の接続料の推移
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写真3●NTTドコモの古川浩司・企画調整室長
写真3●NTTドコモの古川浩司・企画調整室長
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 NTTドコモは2009年3月11日,総務省の接続政策委員会で議論となっている「電気通信市場の環境変化に対応した接続ルールの見直し」(関連記事)に関する説明会を開催した。この説明会では,携帯電話の接続料水準が一部事業者との間で大きく異なる現状を踏まえ,接続料の算定方法の透明化を図ることが必要と訴えた。

 携帯電話の接続料とは,携帯電話事業者の網を利用した際に他の通信事業者が払う利用料金のこと。NTTドコモでは,総務省に報告している携帯電話役務の費用をベースにネットワークにかかるコストを「契約数連動的コスト」と「トラフィック連動的コスト」に分計(写真1)。この中のトラフィック連動的コストのうちで接続に関連する費用を,発信・着信を含めた総トラフィックで除算することで接続料を算出しているという。

 2008年度の接続料は3分換算で28.8円(区域内)~32.4円(区域外)。これは,2007年度の接続料と比べると,区域内/区域外ともに10%以上低下した(関連記事)。さらに2009年度は,会計ルールの見直しで接続料原価から端末販売奨励金を除くことになるため,(2007年度に比べて)25%程度低下する見込みである。

 NTTドコモが問題視するのは,ソフトバンクモバイルとの接続料の格差が広がりつつあることだ(写真2)。ソフトバンクモバイルの接続料はNTTドコモに比べ,2007年度は20%,2008年度は28%高い水準という。NTTドコモの古川浩司・企画調整室長(写真3)は「au(KDDI)との格差は1割程度(KDDIの接続料はNTTドコモに比べ,2007年度は8%,2008年度は11%高い)。(ソフトバンクモバイルとの)約30%の格差は許容範囲を超えている」と話す。接続料は事業者間で精算することになるが,その際に「トラフィックはソフトバンクとほとんど変わらないにもかかわらず,接続料が大幅な支出超過となっている。その水準は億円単位で3桁(けた)を超える。今後は端末販売奨励金を除くことになるので,この格差がさらに広がるのではないかと懸念している」(同)。

 そこで同社は,接続料の算定方法の明確化を図り,すべての携帯電話事業者に適用することを要望する。現行の制度では,接続料について「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの」と規定するだけで,「適正な原価や利潤」に明確な基準はない。「接続料水準を他事業者と同じにしたいわけではなく,少なくとも全事業者で同じルールに基づいて算定すべき。その結果,格差が生じるのであればやむを得ない」(古川企画調整室長)。

 また,接続ルールの見直しで接続料の低廉化が期待されている点については,ユーザー料金(通話料)の低下には直結しないとした。「ユーザー料金はお客様のニーズや競争環境を見極めながら経営判断で決めるもの。接続料が下がれば必ずしも通話料が下がるわけではなく,接続料が下がらなくても値下げすることはある。実際,2008年度は(接続料と関係なく)約2800億円分の料金低廉化を図った。今後もお客様ニーズを踏まえ,料金低廉化に努めていく」(古川企画調整室長)とする。