マイクロソフトは2009年3月9日、製品品質向上活動の途中経過を説明した。同社で品質向上活動を指揮する牧野益巳チーフクオリティオフィサー(CQO)は、「米本社の経営層へ直接働きかけて品質向上を訴える活動を、1年半にわたって続けてきた。ここへきてカイゼンの手応えを感じ始めている」と総括した。

 マイクロソフトは2007年9月にCQOを設置し、品質向上活動を本格化させた(関連記事)。同社は米本社での製品開発、顧客企業でのシステム開発、システム稼働後の運用という三つのフェーズを定義。それぞれで米本社への品質向上の働きかけと日本独自の取り組みを実施してきた。

 経営層に対しては牧野CQOが頻繁に本社へ赴き、開発段階での品質向上を訴えた。「当社に限らず、各国法人の要望を効果的に吸い上げるのは難しい。最後の1マイルを埋めるには、フェース・ツー・フェースの対話しかない」(牧野CQO)。

 成果の一つが米本社における製品品質評価指標の標準化だ。米マイクロソフトは製品品質の評価指標の標準化と、この指標を経営指標の一つとしてとらえる仕組みの整備を、同社の2009年度に実施した。牧野CQOによれば、これらの活動には日本からの訴えが大きく寄与したという。

 日本独自の取り組みとして、技術検証体制の拡充を図った。例えば文書管理ソフト「SharePoint Server 2007」のサポート技術者を、牧野氏が就任前に比べて3倍に増員。データベースソフト「SQL Server 2008」ではシステム会社や顧客企業も加わって正式出荷前の早期検証活動を実施した(関連記事)。

 牧野CQOは社内調査の結果を引用して、品質向上活動を本格化させた2007年を境に、品質をプラス評価する声が問題を指摘する声を上回ったと説明した。今後は本社開発部門との連携強化、日本法人の品質検証体制の強化などをさらに進める。「製品品質は上流工程で作り込むべき。製品開発前の企画やプランニングの段階で、日本側の要望を届ける仕組みを整えたい」(同)。

 同社は併せて、ITエンジニア向けの支援施策も発表した。技術情報Webサイト「MSDN」などからサポート関連の情報だけを抜き出したメールマガジンの発行、技術情報サイトの検索精度向上、スキルアップ支援などだ。「Windows 7」やクラウドコンピューティングサービス「Windows Azure」などの技術情報も、早急に充実させていく。