写真1●NTTドコモは山田隆持社長,KDDIは小野寺正社長兼会長,イー・モバイルはエリック・ガン社長兼COOと,各社トップが意見陳述を行った。
写真1●NTTドコモは山田隆持社長,KDDIは小野寺正社長兼会長,イー・モバイルはエリック・ガン社長兼COOと,各社トップが意見陳述を行った。
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写真2●ソフトバンクは次回に意見陳述を行う予定だが,会合には孫正義社長が出席した。
写真2●ソフトバンクは次回に意見陳述を行う予定だが,会合には孫正義社長が出席した。
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 総務省は2009年3月6日,電気通信市場の環境変化に対応した接続ルールの在り方を検討するため,「電気通信事業政策部会・接続政策委員会合同ヒアリング」を開催した。この会合には,NTTドコモの山田隆持社長,KDDIの小野寺正社長兼会長,ソフトバンクの孫正義社長,イー・モバイルのエリック・ガン社長兼COOの携帯各社トップがそろい踏み,熱い議論を繰り広げた(写真1写真2)。

 接続ルールの見直しは総務省が定期的に実施している。ただ,これまでは固定通信が中心だったが,今回は移動通信がメインになった。モバイル市場はMVNO(仮想移動体通信事業者)の新規参入でプレーヤの多様化が進む一方,NTTドコモと日本通信の間で相互接続を巡る紛争も起こっている。新規参入事業者からは接続条件や接続料の透明性向上を求める意見が増えており,総務省は公正競争確保の観点から移動通信の接続ルールの見直しを図る考えである。

 具体的には,携帯電話事業者による相互接続点の設置や機能のアンバンドル(開放義務),接続料算定の透明性向上,設備共用ルールの整備,ローミングの制度化,通信プラットフォーム機能(関連記事1関連記事2)のオープン化などを検討する。今回の合同ヒアリングでは,NTTドコモ,KDDI,イー・モバイル,日本通信,モバイル・コンテンツ・フォーラムの4社1団体がこれらに対する意見を述べた。

「NTTの組織問題の議論を早急に行うべき」

 NTTドコモの山田社長は,携帯電話事業者に対する規制(第二種指定電気通信設備制度)の対象を,現行のNTTドコモ,KDDI,沖縄セルラーの3社だけでなく,すべての事業者に適用すべきとした。第二種指定電気通信設備制度の規制自体は現状のレベルを維持し,固定通信と同等の規制(第一種指定電気通信設備制度)を課すのは合理的ではないとした。

 さらに山田社長は接続料について,事業者間の接続料の格差が拡大しつつあることを踏まえ,算定方法を明確化した上ですべての事業者に一律で適用すべきと主張する。ローミングは「新規参入の事業者を対象とした時限的な措置とすべき」,通信プラットフォームのオープン化は「(規制による開放の強制ではなく)事業者間のビジネスベースで取り組むべき」といった主張を展開した。

 続いてKDDIの小野寺社長兼会長は,競争がうまく働いている移動通信ではなく,競争が進んでいない固定通信の接続ルールを議論すべきとした。「光の競争が本当に進んでいると言えるのか。光の公正競争を確保するためのルールを今の時点で整備しなければNTTの独占性が強くなるだけ。NTTが独占したあとでルールを決めても何にもならない」と声を張り上げた。

 特にNGNでは「NTT東西が本来の業務である地域通信の枠組みを越えて中継領域にまで進出しており,NTT再編の趣旨をないがしろにしている。この結果,ユーザーがサービスや事業者を選択できる環境を奪われ,技術革新の停滞や利便性の低下を招く。NGNの問題に象徴されるNTTグループの組織問題について,抜本的な議論を早急に行うべき」と主張した。

 一方,移動通信に関しては「接続点の設置や機能のアンバンドルについて共通ルールの整備は不要。不要というよりはルール化できない。各事業者はそれぞれ独自の方式で設備を構築しており,標準がないものをアンバンドルしても意味がない。通信プラットフォーム機能も積極的に開放を進めており,ビジネスベースで取り組むべき」とした。