写真 著作権情報集中処理機構の佐々木隆一理事(左)
写真 著作権情報集中処理機構の佐々木隆一理事(左)
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 日本音楽著作権協会(JASRAC)やネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC)などは2009年3月6日,著作物の適正かつ円滑な利用を促進するため,非営利の一般社団法人である「著作権情報集中処理機構(CDC)」を同日に設立したと発表した。

 理事には,ネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC)の代表世話人を務める佐々木隆一氏(写真)と,日本音楽著作権協会(JASRAC)の常務理事である菅原瑞夫氏が就任した。設立発起人にはNMRCとJASRACのほか,慶応義塾大学大学院教授の岸博幸氏とジャーナリストでCommunity SimulRadio Alliance代表の木村太郎氏,に・よん・なな・みゅーじっくの取締役会長を務める丸山茂雄氏,渡辺プロダクションの代表取締役会長の渡辺美佐氏,国会公務員制度改革推進本部の事務局長で日本経済団体連合会の参与を務める立花宏氏(特別顧問)が名を連ねた。

 インターネットや携帯電話を利用した楽曲コンテンツの配信量が増加傾向にある。その一方で,これらの多種多様なコンテンツの権利処理と使用料分配に必要な楽曲を特定するためのコストや作業量が増大している。「楽曲数の増加によって,調査や報告といった実務に大きなコストとリスクが発生しており,配信ビジネスの大きな阻害要因といえるものになってきた」(CDC理事の佐々木氏)という。

 CDCは,コンテンツ配信事業者の楽曲利用の報告を受ける窓口となる。「フィンガープリント技術」を利用して楽曲の音源データなどから楽曲IDを特定できるデータベースシステムを使い,楽曲配信事業者の利用楽曲をどこの権利者団体が管理しているかを把握して,権利者への利用実績報告データを作成する。利用者(楽曲配信事業者)はこれまで利用楽曲の報告を,その楽曲を管理する権利者団体ごとに行っていたが,今後はCCDに窓口を一本化できる。

 CDCはまず2009年5月の実験システムの稼働に合わせて,本システムの競争見積もりを実施する。本システムの本格運用開始は2010年4月を予定する。システム構築費は,「概算だが2億円から2億5000万円を想定している」(CDC理事の佐々木氏)という。

 なお菅原理事は今回の会見で,「この法人で映像コンテンツを取り扱うことは考えていない」と述べた。こうした権利処理の効率化に向けた取り組みは,「それぞれのプレーヤーごとに考えるべきこと」として,楽曲コンテンツについての取り組みが即座に動画コンテンツにも適用されるわけではないという見解を示した。一方で,「今回の取り組みはネットワーク配信における配信事業者と権利者との初めての取り組みであり,これが一つのパイロットケースになればとは思っている」と付け加えた。