講演するNFCフォーラム議長の田川氏
講演するNFCフォーラム議長の田川氏
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 「2009年暮れには,NFC(near field communication)のコンプライアンス(準拠)プログラムを用意する」。NFCフォーラム議長の田川晃一氏は,2009年3月4日~5日に開催された「第15回ICカード国際シンポジウム」(主催はシーメディアと日本経済新聞社)の講演でこう語った。認定機器については,「ターゲットマーク」と呼ぶ認定ロゴを発行する予定だ。

 NFCは,13.56MHzの周波数帯を利用し最大424kビット/秒の通信を実現する短距離通信規格。同規格を推進するNFCフォーラムは,フィリップスとノキア,ソニーが設立メンバーとなり2004年に発足,現在150社が加盟している。田川氏はソニーでFeliCa事業に携わりながら,NFCフォーラムの議長職に就いている。

 NFCフォーラムの特徴について田川氏は,業界が二分化した光ディスクの標準化争いを引き合いに出しながら「既存の規格をすべて包含する。対立する組織が無いユニークな存在だ」と説明した。具体的には,「Type A,同B」と呼ばれ,欧州などで普及しているISO14443,国内の自動改札やおサイフケータイなどで広く使われる「FeliCa」を含むというものだ。

 NFCフォーラムの役割の一つが,標準化団体との協調関係の構築である。欧州のETSI(欧州電気通信標準化協会)との間では契約が済み,近くリエゾン(渉外)に関して発表があるとした。ほかの団体との調整は「具体論が大変,作業は年単位でかかる」(田川氏)といい,GSMA(GSMアソシエーション)などとは「順次,溝を埋める作業をしているところで,具体的なスケジュールは見えない」とした。
 
 NFCが想定する通信モードには,携帯電話にカード機能を入れ込んだ「カード・エミュレーション」,携帯電話間の「ピア・ツウ・ピア」(P2P),「リーダー/ライター」の3種類がある。このうち,規格化の作業を優先的に取り組んでいるのが,ユーザーからの要求が多いP2Pモード。まずは,類似の機能が用意されているFeliCaを対象にP2Pモードを利用できるようにするという。

 田川氏は,非接触カード機能を利用したモバイル・サービスの海外動向も紹介した。国内ではモバイル機器による自動改札や決済サービスが広く普及しているが,欧米では実証実験は多数あるものの,実用事例はほとんどないという。理由の一つとして,国内のフェリカネットワークスのような,カード情報の管理団体が存在しないことを挙げた。そのため,通信事業者や端末メーカー,サービス事業者の利害関係が折り合わず,エコシステムが出来上がらないという分析である。そこで,日本とは違って海外では,端末メーカーとサービス事業者だけで始められる,決済と交通以外の「ノンセキュア」なアプリケーションから始まるのではないかという見解を示した。

■変更履歴
当初掲載していた3枚のスライド画面写真は,主催者の取材許諾方針に従って削除しました。関係者の皆様にはご迷惑をお掛けいたしました。 [2009/3/9 19:10]