米IBMの研究開発部門IBM Researchは米国時間2009年3月1日,電流によるカーボン・ナノチューブ(CNT)からの発熱や熱伝搬を計測する技術を開発したと発表した。CNTを電子回路素子の部品として利用する際,基礎データの収集や性能改善に役立つという。詳細は英国の科学雑誌「Nature Nanotechnology」に掲載する。

 この計測技術を利用すると,CNTの電流が熱に変わり,それがCNTを構成するカーボン(炭素)原子の振動とCNTの下にある基板の表面振動として広がる様子を調べられる。こうして得たデータは,電子回路素子としてみたCNTの熱特性の理解につながり,CNT電子デバイスの実現に重要な情報をもたらすとしている。

 計測は,半導体の特性を示す1本のCNTをトランジスタのアクティブ・チャネルとして使い,極めてかすかな共鳴光散乱と電子の移動を検出して行った。研究グループは,電流の影響でCNTの光学特性がわずかに変化する現象を温度計として利用し,発熱/熱伝搬を観測した。

 CNTは,炭素原子を直径数ナノメートルのチューブ状に結合させた分子。太さは人間の毛髪の10万分の1程度しかない。LSI用配線やアクティブ・チャネル素子としての応用が期待されている。

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