写真●情報処理推進機構 IT人材育成本部の田中久也本部長
写真●情報処理推進機構 IT人材育成本部の田中久也本部長
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 情報処理推進機構(IPA)は2009年2月26日、IT人材市場動向調査の結果の一部を公表した。昨年の予備調査と比べて「IT人材に不足していると感じる対象」が「量から質」へと変わってきたことが明らかになった。「経済状況の悪化で大量の人材を必要としなくなったり、作るよりSaaSやクラウドを使うようにシステムの利用形態が変化してきたことが原因と考えられる。今後もこの傾向は続くだろう」と調査を実施したIT人材育成本部の田中久也本部長は話す。

 IT人材市場動向調査は、IT人材のスキルレベルや不足具合などを定点観測するもので08年度から本格的に始まった。その結果、IT人材の「質が大幅に不足している」と回答したITベンダーは32.4%で「量が大幅に不足している」と回答した16.2%を上回った。2007年調査はそれぞれ23.5%と28.3%であり2008年に逆転したことが分かる。

 「大幅に不足している」と「やや不足している」の回答を合計すると、質は87.0%が、量は75.6%が不足感を感じている。ユーザー企業でも傾向は同様で「大幅に不足」と「やや不足」の合計は、質で87.7%、量で81.2%である。

 質の一つの目安であるIT人材のスキルレベルは「前回とほとんど変わっていない。質を向上する教育がうまく機能していないのが理由だ」(IT人材育成本部の丹羽雅春 ITスキル標準センター長)。田中本部長は今後、「高い業務スキルを持ってサービスを設計できる人材やクラウド時代のアーキテクチャでも信頼性を保って構築できる人材など、質の高さを求めて人材育成の計画を作っていきたい」と話す。「2015年のアジア全体の技術者数は700万人で、そのうち日本は70万人という。70万人が700万人の底辺にいるようなことがあってはならない」(同)。

 また昨年に引き続き、IT人材のスキルの「ものさし」として03年から利用できるようになったITスキル標準(ITSS)と06年から始めた情報システムユーザースキル標準(UISS)の普及状況も調査した。これは前回よりも普及率が高まった。ITSSを利用するITベンダーは前回より4.7ポイント増の33%、UISSを利用するユーザー企業は前回より1.6ポイント増の3.3%だった。「ITSSは普及フェーズに入った一方で、UISSはまだ啓蒙が必要だ」(丹羽センター長)。

 調査はITベンダー3000社と上場しているユーザー企業3000社を対象として、08年9月18日~10月3日にアンケート形式で実施。ITベンダー549社(回答率は18.3%)とユーザー企業335社(同11.2%)から回答を得た。調査結果は八章に分類し、本日はそのうち二つを公開した。残りは二つの章ごとに3月中旬から4月上旬にかけて順次公開していく。また分析を加えた調査結果を白書にして5月上旬に出版するという。価格は「1万円以下にしたい」(丹羽センター長)。