米Microsoft CEOのSteve Ballmer氏は2009年2月24日(米国時間),1時間に及んだ金融関係者向け説明会のなかで,同社の戦略見直しを発表するとともに,2009年は極めて厳しい年になるとの見通しを示した。新たな戦略と2009年の見通しのどちらも,とても明るいとはいい難い。同氏は,景気低迷が少なくとも2009年下半期までは続くとみており,その時期を「経済をリセットする」期間と呼んだ。

 「この状況から逃げずに対応しよう。リセットとみなすと,リセット完了に数年かかる可能性がある。そこで『何に投資するのか』をきちんと考えなければならない。『経済のリセットに合った事業のリセットが何であるか』を問う必要がある」(Ballmer氏)と語った。

 同氏によると,Microsoftはすでにリセット期間を切り抜ける態勢になっており,人員削減は以前発表した5000人が最後になる予定という(5000人のうち,1400人の削減は1月に実施済み。関連記事:Microsoftの10~12月決算は11%減益,最大5000人を削減へ)。同氏のニューヨーク滞在中に,同社の株価は一時16.36ドルという11年ぶりの安値となり,その後やや持ち直した。だが,同氏は同社の長期的な展望について強気の姿勢を崩さず,沈みゆく状況から抜け出すのに必要な技術革新に向け,2009年に95億ドルの研究開発費を投ずる計画だ。

 ところで,同氏はこの説明会で未発表の新製品について何も話さなかった。発表済み製品については,次期クライアントOS「Windows 7」の作業が予定通り進行中と述べた。同OSの一般向け出荷は,2009年第3四半期に始まるとみられている(関連記事:「Windows 7」のベータ版は終了,早ければ今年半ばにリリース)。ユーザーの多いオフィス・プロダクティビティ・スイートの次版「Office 14」のリリースは,2010年になるという。また,2009年に出荷する予定の「Windows Foundation Server」という,サーバーOS「Windows Server 2008 Release 2(R2)」の低価格版について少し触れた。この低価格版の存在は,SuperSite for Windowsが2008年12月にはじめて報じた(関連記事:Windowsの天下は2009年も続く)。さらに,Microsoft版クラウドOS「Windows Azure」も早ければ2009年に登場する予定だ(関連記事:2009年のMicrosoftには課題が山積)。

 そのほかの同社の事業は混沌とした状態にある。モバイル機器向けOSの「Windows Mobile」事業は「やや赤字体質」で,消費者市場の強力な新ライバルに行く手を阻まれている。同社のインターネット検索/広告事業はIT業界でジョーク扱いされ,Ballmer氏も「信じられないほど厳しい勝負」であると認めた。ただし,同氏は「長い目でみる」としている。ゲーム機「Xbox 360」と携帯用メディア・プレーヤ「Zune」でカバーするエンタテインメント/テレビ事業は,今のところわずかな黒字に過ぎないものの,将来は大きなチャンスをもたらすだろう。同氏は「今後ZuneがXbox 360や携帯電話機,パソコンなど,Zuneデバイス以外の上で動くZuneソフトウエアを意味するようになる」と暗に示した(関連記事:Microsoft,Zuneプラットフォームを他社へ提供,自社製デバイスも継続提供)。