写真●Global IP Business Exchange 2009「枯渇対応Businessセッション」の様子
写真●Global IP Business Exchange 2009「枯渇対応Businessセッション」の様子
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 2009年2月25日,IPv6の技術の利用やビジネスの広がりにフォーカスしたイベント「Global IP Business Exchange 2009」(主催はIPv6普及・高度化推進協議会)が東京都内で開催された。イベントの最後にIPアドレス枯渇問題に焦点を当てた「枯渇対応Businessセッション」が設けられ,ISPやデータセンター,コンテンツ事業者,ネットワーク・インテグレータ,行政といったさまざまな業態の担当者が講演やパネルディスカッションを行った(写真)。

 セッションの最初に,総務省の桜井俊・総合通信基盤局長が挨拶。「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」の開催といった同省のこれまでの取り組みと,2月27日に1回目の会合を開く「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」について紹介した。アドレス枯渇は世界的に直面している問題で,IPv6サービスへの早期移行はアジア諸国も関心を持っていると説明し,「日本がインターネット・サービスやアプリケーションのソリューションにおいて国際競争力を発揮できるいいチャンスだと思っている」と結んだ。

企業のアドレス枯渇対策は「まさに今から」

 次に,NTTコミュニケーションズの海野忍・代表取締役副社長 法人事業本部長が,企業のIPv4アドレス枯渇への対応をテーマに講演した。海野氏はアドレス枯渇時期が2年先に見えてきていることに触れ,企業の社内システムは計画して作り替えるのに早くて9カ月,普通は1~3年の期間を要すると解説。平均して2年と考えれば今日がその日だとして,「今日から,どういうシステムに変えていこうか検討しないと間に合わなくなってしまうのではないか」とコメントした。

 アドレスが枯渇すると企業にも影響が出る点にも触れた。グローバルIPv4アドレスを入手できなくなることで,企業の継続的な成長が妨げられる恐れがある。またIPv4とIPv6の並存期間が発生するため,そこで失敗すると2重投資が発生する。いかにお金をかけず並存期間をくぐり抜けるかを企業は考えていかなければならない。また今後IPv6でアクセスしてくる顧客が出てきたときに,IPv4だけしか割り振られていないサーバーでは対応できず,顧客サポートの継続できなくなってしまう。「こうした問題点に対して,各企業のCIOはどういう態度で臨むべきかを考える時期が来たと思っている」(NTTコムの海野氏)。

 企業が考えていくべき点としては,「いつまでにIPv6に対応すればよいか」「どこまでIPv6対応にすればいいのか」「今あるIPv4をいつまで使い続けるか」の三つを挙げた。また「公開サーバー」「端末」「ゲートウエイ」のそれぞれについて,IPアドレス枯渇の対応策を選択肢と共に説明した。続けて,同社の企業向けサービスのIPv6対応も解説。今後の予定として,法人向け通信サービス「Arcstar」でデュアル・スタックのIP-VPNを2009年3月に国内で利用可能にして,2010年にはその範囲を海外に広げることを明らかにした。

立場によってとらえ方と対策はさまざま

 講演の後のパネルディスカッション「IPv4アドレス枯渇の乗り越え方」では,IPv6普及・高度化推進協議会の荒野高志・常務理事をコーディネータに5人のパネリストが登場。冒頭で荒野氏は,IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースが2009年2月に公開した「IPv4アドレス枯渇対応 アクションプラン 2009.2版」を解説した。ネットワーク関連の事業者が最速のアクションを取る場合,2009年の第1四半期,つまり今が経営判断をしなくてはならない時期だという。

 続いてパネリストがプレゼンテーションを披露した。ここでは,コーディネータの荒野氏がまとめた,各氏のプレゼンテーションの主なポイントを紹介する。

ISPの立場からNTTコミュニケーションズの山下達也・法人事業本部 u-Japan推進部 担当部長:「NTTコムのバックボーンは大半の部分がIPv6に対応済みだが,アプリケーションはまだ(そこまでいっていない)」「ISPにはいろいろな種類があり,どう対応すべきかと現在の状況はまちまち」

データセンターの立場からソフトバンクIDCの三浦剛志・取締役 運用本部担当:「全体像の把握が大事」,「初めてこの問題にあたった人にとって理解のための情報提供が重要」

コンテンツ事業者の立場からライブドアの伊勢幸一・執行役員 CTA 情報環境技術研究室長:「該当しない場合もあるが,大半は負荷分散装置とリバース・プロキシをIPv6に対応させればよい」「IPv6対応はやれと言われればいつでもできる」

ネットワーク・インテグレータの立場からネットワンシステムズ NWテクノロジー本部 研究開発部の花山寛氏:「クラウド化にともなってSIがNIに近くなる」「同社は枯渇対策ビジネス化を進行中」「アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間にあるギャップを乗り越えなくてはいけない」

行政の立場から総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 データ通信課の武馬慎・課長補佐:「国際を含めた各種調整(につとめる)」「側面支援を実施したい」

 この後パネリスト各氏が,コーディネータや他のパネリストからの質問に答えたり意見をぶつけたりする形で,「IPアドレス枯渇対応に関する素朴な疑問」の答えを聴衆と情報共有した。