「日本企業の国際的な競争力を高めたい」――。こういった志の下、システム構築プロジェクトの成功率向上を目指す一般社団法人が2月24日、設立記念の集いを開き、本格的な活動を開始した。システムの開発フェーズにとどまらず、経営者を巻き込んだ戦略立案や要求確定段階にまで対象を広げ、方法論やノウハウを定義し、その普及を目指す。

 この日、本格的な活動を開始したのは、一般社団法人の「ビジネスプロセス・アーキテクト(BPA-P)協会」。同協会が定義するBPA-Pとは、企業戦略に合致した情報システムを設計するとともに、その実現に向けたプロジェクトを第3者視点でマネジメントできる人材のこと。理事長の田村英二氏(シナジェティック・コンサルティング共同代表)によれば、「建築業界における、設計者とCM(コンストラクション・マネジャー)の両機能を併せ持った役割で、ユーザーの立場で動く」という。

 BPA-P協会を立ち上げた初期メンバーは、ビジネスモデルの設計に携わったり、失敗プロジェクトの立て直しに呼ばれたりするプロジェクトマネジャーなど、PMの専門家。これまでは、プロジェクトを請け負ったインテグレータなどから支援を頼まれるケースが多かった。しかし、「“火消し役”としてプロジェクトを成功させたとしても、そのプロジェクトが必ずしも経営に役立つ仕組みになるとは限らない。経営のためのITを実現するためには、戦略立案段階から専門家として参画する必要がある」(田村理事長)との想いから、協会設立に動いた。

 そのため、BPA-P協会は、ユーザー企業が果たすべき役割の体系化と、その実行を支援したい考えだ。対象は、戦略立案やそれを具現化するための要求定義、開発プロジェクト進行中のベンダーマネジメントなどで、同プロセスを、システム構築段階の開発プロジェクトに対し、「ユーザープロジェクトマネジメント」と呼んでいる。「ユーザーが果たすべき役割を果たさなければ、ITの価値を最大限には享受できない」と、田村理事長は強調する。

 設立集会を前に、BPA-P協会は既にいくつかの活動を始めている。メンバーがプロジェクトマネジメントの現場で得た本音を集めた「つぶやき集」の取りまとめ、従来のやり方と比べITコストの半減を目指す「ITコスト50」、プロジェクトの進行をユーザー視点で管理する「顧客対価アプローチ」などだ。今後は、これら活動の成果を方法論・ノウハウ集にまとめ、一部は公開するほか、人材の認定にも取り組む。

 BPA-P協会の会員は、上記の方法論やノウハウの開発・普及に参画できる個人。入会金は3000円、年会費は1万2000円である。