写真●富士ソフトの間下浩之営業本部副本部長
写真●富士ソフトの間下浩之営業本部副本部長
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 2月24日都内で開催された「クラウド・コンピューティング フォーラム」で,2008年6月に日本企業として初めてGoogleエンタープライズ製品の販売パートナーになった富士ソフトの間下浩之営業本部副本部長(写真)が登壇,商材としてのGoogleの可能性,そして全社員1万人にGoogle Apps Premier Editionを展開中のユーザー企業としての経験について語った。

 同社がGoogleのパートナーになってから,非常に多くの引き合いがあったという。案件化したケースの多くは,単にGoogle Appsを導入するだけでなく,セキュリティ関連のシステム構築などを含むSI案件として受注しているという。「金融危機の影響でコスト意識が非常に高くなったせいか,2008年11~12月には特に引き合いが多かった。11月には200件以上,今もそれ以上の数の案件を抱えている」(間下副本部長)。

 だがGoogle Apps Premier Editionを企業に提供するにあたっては,少なからず課題にぶつかった。「Googleのセキュリティ面を心配する顧客が多かった」と間下副本部長は語る。そこで富士ソフトは,自らもGoogle Apps Premier Editionユーザーとなるべく2008年9月から1500人規模のトライアルに着手し,セキュリティ面をはじめ様々な検討を重ねた。その後少しずつ規模を拡大しながら2008年12月には全社導入を決断,現在最終段階として1万人への展開中である。

 ユーザーとして得たノウハウをもとに,富士ソフトはGoogle Apps導入企業向けのサービスを複数開発している。例えばGoogleのサービスにログインする前の段階でユーザー認証を行う仕組みを作った。また,「添付ファイルに機密情報が含まれていることが多い」と心配するユーザー企業のために,添付ファイルをGoogleのセンターに送らないようにし,顧客社内もしくは富士ソフトのセンターに保管するサービスを開発中という。

 間下副本部長は,「巨大なストレージを安価に使えること」「膨大な数の一般ユーザーが使い続けており,テストしつくされていること」「日々改良されていること」などをGoogleの長所として挙げた。だが一方で問題点として挙げたのは「もともと,コンシューマ対象のシステムなので,サービスやサポート体制の点で企業の組織や運営に関する考慮に欠ける」ことである。逆に言えばここが富士ソフトの商機というわけである。

 最後に間下副本部長は,Googleビジネスへの参入が富士ソフト社内にもたらした1つの変化を報告した。それは社員の活性化である。「富士ソフトはもともと開発屋だが,社内ではGoogleやiGoogleを使っている社員が大勢おり,ビジネスとして扱えたら面白いのにという声が出ていた。今では多くの社員がイキイキとGoogleのビジネスに取り組んでいる。これまで受身の仕事が多かったが,積極的に外に出てお客さんを獲得できるようになった」と“一番の収穫”を披露した。