写真●会場の様子
写真●会場の様子
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 2009年2月25日,「クラウド・コンピューティング フォーラム」のQ&Aセッションに,米アマゾン・ドット・コムの技術エバンジェリストであるシモーネ・ブルノッツィ氏が回答者として登壇した(写真)。ブルノッツィ氏は,同フォーラムの基調講演にも登壇している(関連記事)。

 Q&Aセッションでは,同フォーラムの参加者から事前に寄せられた質問を,日経コンピュータの中田敦記者が代表してブルノッツィ氏に尋ねた。また,会場からも質問を募った。仮想サーバー「Amazon EC2」,仮想ストレージ「Amazon S3」をはじめとするAmazon Web Services(AWS)のセキュリティ面や,日本での展開予定に質問が集中した。以下,その一部を紹介する。

Amazon EC2やAmazon S3は,なぜ低コストで提供できるのか。

 ご存知のように,米アマゾン・ドット・コムはこれまで本の小売業を営んできた。小売業は薄利多売のビジネス・モデルであり,システムの低コスト化,運用効率化への要求が非常に厳しい。そのため,AWSを立ち上げたときには,既にコスト効率が良いシステムが出来上がっており,運用の卓越性が確立されていた。

クラウド・コンピューティングに移行する上で気になるのはセキュリティだが,AWSは安全なのか。

 米アマゾン・ドット・コムは,既に9000万人分のクレジットカード番号を預かっている。そのため,これまでもセキュリティには力点を置いてきた。AWSを開始したときにも,これまでと同様に,セキュリティを強固にすることに執着した。現時点で,金融機関のユーザーもAWSのセキュリティを信用して使っているので,既に優れたセキュリティを提供できていると考える。

現在,クラウド・コンピューティングの導入はベンチャー企業に限られているのではないか。大企業での導入事例はあるのか。

 もちろん,スタートアップ企業,小規模企業が最初にAWSを導入することは想定していた。しかし,米国,欧州では既に次の段階に来ている。米ハーバード大学や,米ニューヨーク・タイムズ,NASDAQなど,大規模システムを持つ企業・団体でも導入が始まっている。アジア地域にAWS用のデータセンターが完成すれば,日本でも大企業向けの導入が進むと考えている。

AWSのアジアでの展開予定は?

 時期,場所は明らかにできないが,早期にアジア地域にAWS用のデータセンターを建設したいと考えている。ただ,現在でも日本のユーザーが,米国や欧州のデータセンターにアクセスしてAWSを利用している例はたくさんある。バッチ処理のような,ネットワークの遅延が問題にならない利用もある。

Oracle DatabaseをEC2で使いたいのだが,日本ではサポートがいまいちだ。

 既に米国と欧州では,Oracle製品をEC2に実装できるようになっている。実際に運用している例もあり,製品間で連携が取れている。ただ,日本ではまだ展開していない。アジア地域にデータセンターができたあかつきには,日本でも利用できるようになるだろう。また,サポート体制については,現在ワールドワイド・サポートを「シルバー」と「ゴールド」の2通り用意している。シルバーは,営業日,稼働時間内のサポートが得られるもの。ゴールドは,24時間365日,電話,電子メールでの問い合わせができるものだ。良いサポート・オプションが整っている。

EC2やS3をインターネットではなく,よりセキュアなネットワークで使うことはできるか。

 ユーザーのパソコンと,EC2/S3間の通信を暗号化することは可能だ。また,米国や欧州では,サード・パーティーがVPNなどのサービスを提供している。

■変更履歴
本文中,「英ハーバード大学」とありましたが,正しくは「米ハーバード大学」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/02/25 12:00]