写真●マイクロソフトの関田文雄デベロッパー&プラットフォーム統括本部シニアマネージャ
写真●マイクロソフトの関田文雄デベロッパー&プラットフォーム統括本部シニアマネージャ
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 2月24日に都内で開催された「クラウド・コンピューティング フォーラム」会場で,マイクロソフトの関田文雄デベロッパー&プラットフォーム統括本部シニアマネージャが講演。クラウド・コンピューティングを検討する企業や,クラウド・サービスの提供を計画する企業に向け,同社のクラウド戦略とクラウド採用のポイントを説明した。

 クラウド・サービスは一般に,PaaS(Platform as a Service),SaaS(Software as a Service),IaaS(Infrastructure as a Service)に分類される。マイクロソフトは,これらのうちPaaSとSaaSの提供にフォーカスする。

 同社はそのための施設やハードウエアの整備に積極的に投資しているという。「大規模データセンターの建設に5億ドルを投じ,200台余りのコンテナで計55万台のサーバーを稼働させている。これは日本で1年間に出荷されるPCサーバーの総台数に匹敵する規模だ」(関田シニアマネージャ)と紹介。マイクロソフトの“本気度”を示す証拠だとした。

 クラウド・サービスが登場したことで,システムの稼働場所に着目した運用形態は,オンプレミス(自社運用),ホスティング・サービスの利用,クラウド・サービスの利用の3種類に大別できる。マイクロソフトは当面の戦略として,企業によるクラウドとオンプレミスの混在利用を支援する考えだ。

 そこで重要なのは,どんなアプリケーションをどこで,どのように運用するべきかという全社的なポートフォリオだという。「各所で勝手にクラウドを使うと,統制が効かなくなる」(同)。

 ポートフォリオ策定の参考例として,関田シニアマネージャは,ある大手製薬会社の取り組みを紹介した。ERPパッケージは自社運用からホスティングへ,CRMやメールのシステムはSaaSに切り替えたという。内製アプリケーションのうち,分子研究関連のものはPaaSを利用して社外で稼働させ,コア中のコアである臨床試験のアプリケーションは自社内に残した。

 関田シニアマネージャは,マイクロソフトがクラウドOSとして打ちだしているWindows Azureのデモも披露した。Azureに手元のソフトを導入し,動かせる状態にするというものである。「Azureはクラウド・サービスのための“OS”だ。コンシューマ向けの大量のトランザクションを伴うサービスも,中小企業向けのサービスも想定して作られている。可用性や拡張性,パフォーマンスなどは我々が保証する」(関田シニアマネージャ)。

 またAzureを評価中の事例として,JTB情報システムが開発中のコンシューマ向けサービスや,東証コンピュータシステムによる証券取引データの分析サービス,グレープシティが展開する学校法人向けASPの基盤サービスなどを紹介。「半年から1年ぐらい後には,本番運用の事例が紹介できるだろう」と語った。