写真1●イリジウム・サービスの携帯端末。右が今回発表の新製品「9555」,左が既存製品「9505A」
写真1●イリジウム・サービスの携帯端末。右が今回発表の新製品「9555」,左が既存製品「9505A」
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写真2●インマルサットBGANの低価格端末「Sable1」
写真2●インマルサットBGANの低価格端末「Sable1」
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写真3●インマルサットBGANの車載端末「Explorer727」
写真3●インマルサットBGANの車載端末「Explorer727」
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写真4●KDDIソリューション事業統轄本部 ICT事業本部の東海林崇ICT営業本部長
写真4●KDDIソリューション事業統轄本部 ICT事業本部の東海林崇ICT営業本部長
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写真5●KDDIソリューション事業統轄本部 ICT事業本部 ICT営業本部の中村博行MSATビジネス営業部長
写真5●KDDIソリューション事業統轄本部 ICT事業本部 ICT営業本部の中村博行MSATビジネス営業部長
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図1●イリジウム衛星の概要
図1●イリジウム衛星の概要
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図2●インマルサットBGANのネットワーク構成
図2●インマルサットBGANのネットワーク構成
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 KDDIは2009年2月23日,イリジウム衛星による衛星携帯電話端末と,インマルサット衛星による衛星ブロードバンド端末の新製品を2月24日に発売すると発表した。今回発表したのは,イリジウム衛星携帯電話端末が「9555」の1機種(写真1)。インマルサット衛星を使った衛星ブロードバンド・サービス向けの端末としては,日本語対応・低価格の「Sable1」と車載向けの「Explorer727」の2機種(写真2写真3)。

 23日に開催された説明会で,初めに同社ソリューション事業統轄本部 ICT事業本部の東海林崇ICT営業本部長が背景やサービスの概要などについて述べた(写真4)。

 同氏はまず,固定電話や携帯電話のエリア外での利用に加え,非常災害時のBCP(business continuity plan)への意識の高まりに伴い,衛星通信へのニーズが増大していると説明した。

 同社は現在,イリジウム衛星を使ったサービスと,インマルサット衛星を使ったサービスの2種類を提供している。イリジウムは主に音声通話に利用するサービスで,インマルサットは通話とデータ通信の両方を使いたい場合のサービスだという。

 イリジウムは,地上780kmの低い軌道を周回する66機の現用衛星でサービスを提供する(図1)。北極および南極の近くで交差する6本の軌道(レーン)上にそれぞれ11機の衛星が配置されている。また,地上648kmの軌道を8機の予備衛星が周回しており,現用衛星が故障したときには予備衛星が現用衛星の軌道に移動してサービスを継続する。2月10日に現用衛星の1機がロシアの通信衛星と衝突した事故では,この予備衛星の1機が破壊された現用衛星を引き継ぐ予定である(関連記事)。

 イリジウム端末同士の通信では,地上系ネットワークを経由せず,複数のイリジウム衛星だけを経由するようになっている。イリジウム端末と固定電話や携帯電話と通信する場合は,米国アリゾナ州にあるイリジウム地球局を経由し,固定電話網や携帯電話網と接続している。

 イリジウムは,周回する衛星が地平線に近づくと,他の衛星が通信をリレーすることで,通話を途切れないようにしている。そのため,複数の衛星を見渡せる環境が必要だという。仰角8.2度から上空を見渡せるところが,理想的な通話環境としている。

 一方のインマルサットは,地上3万6000kmの静止衛星を使った通信サービス(図2)。3機の第4世代インマルサット衛星を使った高速ブロードバンド・サービスは,2月25日から全世界で利用可能になる。第4世代衛星で全世界をカバーするには3機必要だが,以前は2機だけしか打ち上げられていなかった。2008年8月に3機目の第4世代衛星を打ち上げ,衛星の再配置などの措置を経て,今回の全世界のカバーに至った。

 第4世代インマルサット衛星を使った高速ブロードバンド・サービスは,陸上向けの「BGAN」(broadband global area network)と,海上向けの「FB」(fleet broadband)の2種類がある。今回の新端末は,いずれもBGAN向けである。BGANは,最大伝送速度492kビット/秒のデータ通信を実現できる。同時に音声通話(4kビット/秒)が可能である。

 続いて,同社ソリューション事業統轄本部 ICT事業本部 ICT営業本部の中村博行MSATビジネス営業部長が端末の詳細について説明した。

 まずイリジウムの新端末である9555の改良点を述べた。従来品の「9505A」に比べて,容積を約30%減らしたという。また,9505Aではアンテナが外付けであるのに対し,9555は内部収納にして持ち運びしやすくした。さらに,データ通信をする場合,9505Aでは別売りのデータ通信用アダプタが必要だが,今回の9555は2.4kビット/秒と低速ながら本体単独でデータ通信できるようにした。

 イリジウム・サービスの利用料金としては,まず初期費用として使用契約料が1万500円かかる。基本料としては月額6000円(このうち無料通信分が2000円)の「6000円プラン」と,同5000円(同1000円)の「5000円プラン」の2種類のプランがある。6000円プランの通話料は,固定・携帯電話あてが55円/20秒,イリジウムあてが35円/20秒,その他の衛星電話あてが500円/20秒である。5000円プランの通話料は,固定・携帯電話あてが63円/20秒,イリジウムあてが40円/20秒,その他の衛星電話あてが572円/20秒である。

 端末の価格は,9555の基本セット価格が24万9900円,旧機種の9505Aの基本セット価格が24万1500円となっている。

 インマルサットBGANサービスでは,プランS,プランM,プランL,プランXLという4種類の通話プランが用意されている。例えば,プランSでは,月額基本料が5000円,無料通信分の設定はなく,スタンダードIPパケット通信料が850円/1Mバイト。プランXLでは,月額基本料が38万円,このうち無料通信分が30万円,スタンダードIPパケット通信料が430円/1Mバイトと設定されている。音声通話については,全プランで一律170円/分となっている。

 端末の価格は,Sable1が38万8550円,Explorer727が262万5000円。

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