IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース代表代理の荒野高志氏
IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース代表代理の荒野高志氏
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 「2012年夏にはIPv4アドレスの在庫が無くなる。今後,IPv6対応が上手にできるかどうかで,データセンター/ISP事業者の未来が決まる。IPv4アドレスの枯渇はビジネス・チャンスなのだ」---。IPv4アドレス枯渇対応タスクフォースの代表代理である荒野高志氏は2009年2月23日,ITproテクノロジ・カンファレンス「プロバイダ/データセンターのIPv4アドレス枯渇対策」で講演し,迫り来るIPv4アドレスの枯渇に対する心構えと対策について解説した。

 荒野氏は冒頭で,そもそもIPv4アドレス空間(32ビット)が世界人口に対して少な過ぎるという構造上の問題を指摘。1人につき4個のアドレスが必要とすると,全世界の60億人に対しては240億個のアドレスが必要になっているとした。

 こうした構造上の問題を踏まえた上で,荒野氏は全世界のグローバル・アドレスを管理しているIANA(Internet Assigned Numbers Authority)の報告ではIPv4アドレスの枯渇時期が2011年3月に迫っている点を,現実に起こっている問題として指摘。2009年1月現在,IANAの在庫アドレスは8ビット(/8)が32ブロックしかない。このため,アジア太平洋地域のアドレスを管理するAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre)でも割り当て済みの在庫を含めて2012年の夏頃には在庫アドレスが無くなり,それと同時に日本でのアドレスを管理するJPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)での割り当てアドレスも枯渇してしまう。

 金融危機などの市場情勢の変化によって実際の枯渇時期はずれるかも知れないが,枯渇が目の前に迫っているという事実には変わりがない。携帯サービスの拡大やIPv4の駆け込み需要といった,むしろIPv4アドレスの消費を加速する要因も多い。荒野氏は,最近の事例として,米Verizon Communicationsがスマートフォンのために9ビット(838万8608個)のIPv4アドレス空間を取得したばかりである点を指摘した。

ネットワークの整備がクラウド時代を迎える大前提

 IPv4が近い将来に枯渇するとなると,データセンター事業者やISPにとっては,いかに上手にIPv6に対応していくのかが重要になってくる。サーバーにはグローバル・アドレスが必要なので,大量にグローバル・アドレスを持つデータセンター/ISPに顧客が集中するのが自明だからだという。

 ただし,IPv6への対応は,事業者全体で取り組まなければ効率が悪いと荒野氏は言う。IPv6への対応が事業者によってバラつきがあると,コスト要因になるからである。IPv4とIPv6を継ぎはぎにしたネットワークでは,コストをかけない限り相互接続性が失われる傾向にあり,一部のサービスでつながりにくくなることもあるからだ。

 荒野氏は,こうした継ぎはぎのネットワークについて「メールなら構わないが,今後広がるクラウド・コンピューティングでは大きな問題になるだろう」と語る。ところが,「そうしたクラウドは,整備されたネットワークを前提としている」(荒野氏)。だからこそ,クラウド時代を迎えるにあたって,ネットワークが整備されていなければならないのである。

 最後に荒野氏は,データセンター/ISPによるIPv6移行の具体的なアクションとして,内部インフラと顧客対応など,IPv6対応個所に応じてプランニングを立てて取り組むことが重要であるとした。まずは内部インフラの整備を進め,IPv4の枯渇に合わせた形で顧客企業のIPv6移行を進ませる,といった具合だ。「IPv4アドレスの枯渇によって,顧客を説得しやすくなるだろう」(荒野氏)。